研究課題/領域番号 |
16K02237
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石田 圭子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (40529947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アルベルト・シュペーア / 廃墟価値の理論 / ピクチャレスク / ナチズムの美学 |
研究実績の概要 |
研究2年目にあたる平成29年度は、おもにアルベルト・シュペーアの「廃墟価値の理論」について研究を進め、その成果について発表を行った。また、カール・ハインツ・ボーラーの『突然性』を読み進め、モダニズム美学特有の時間性について考察を進めた。 昨年度から収集したシュペーアおよび18~19世紀ヨーロッパの廃墟理論に関する文献を読み進め、それを参考にしながらシュペーアの廃墟理論について考察を進めた。今年度の研究では18世紀のピクチャレスク芸術家における「未来完了型」廃墟における想像力とシュペーアが構想した「未来の廃墟」について比較考察を行った。さらに、ベンヤミンのアレゴリー論を手がかりにしてシュペーアにおける廃墟の時間性を考えることでその本質把握に努めた。その結果、時間(もしくは歴史)の感覚という点において、シュペーアが20世紀に唱えた廃墟理論は、通説とは異なり、かつてのピクチャレスクにおける廃墟の美学とは異質なものであることを明らかにすることができた。 以上の研究成果はまず平成29年6月30日~7月1日にベルリン自由大学にて行われたワークショップ(神戸大学、立命館大学、ベルリン自由大学が参加したジョイント・ワークショップLandscapes in Art, Theory, and Practice across Media, Time, and Place)にて発表した(発表タイトルは”On the Fascist Theory of Ruin Value")。さらに、その発表内容を発展させて論文としてまとめた。論文は当大学研究科紀要『国際文化学研究』第50号(平成30年7月発行)に投稿する予定である。 さらに、カール・ハインツ・ボーラーの「突然性」という概念を手がかりにモダニズム美学における時間性について考察を進めた。平成30年3月に行われた研究集会にてその研究成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
29年度の研究内容として予定していたのは、(1)ベン、ユンガー、シュペーアの歴史/時間意識についての考察(2)資料収集(3)研究成果の公表であった。(2)(3)については達成できたが、(1)についてはシュペーアの研究に集中したため、ベンとユンガーについての研究を十分に進めることができなかった。しかしながら、来年度に進める予定であった論文執筆とベンヤミンのアレゴリー研究を今年度先取りすることができたため、全体的に見ておおむね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年にあたる平成30年度は、まず昨年度にまとめたシュペーアに関する論文「アルベルト・シュペーアにおける「廃墟理論の価値」をめぐって」を当大学国際文化学研究科研究紀要『国際文化学研究』に発表する予定である。 さらに、昨年から取りかかっていたカール・ハインツ・ボーラーの「突然性」に関する考察を手がかりにして、ナチズム期における芸術および政治に共通する時間意識について明らかにしていく予定である。とくに、『突然性』においてボーラーがモダニズム美学に認める「突然性」がファシズムにおいても認められると述べている箇所に注目し、その点からあらためてワイマールからナチズムへと続く時代の時間意識の特殊性について考察を進めたい。その際に、ベンヤミンの「弁証法的形象」に関する考察について調べ、そこに認められる神話(永遠性)とアレゴリー(歴史的推移)の絡まり合いを参照点とする予定である。 最終的な研究成果は論文としてまとめ、学術誌に投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 申請時に見積もっていた図書の購入費用および文献複写・取り寄せ費用と実際に購入した図書および文献複写・取り寄せ費用に差額が生じたため。 (使用計画) 前年度の次年度使用額は、今年度の図書の購入費用もしくは文献複写・取り寄せ費用に充てる予定である。
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