中国の古代から中世にかけての研究であるが、この時期の文字、特に「楷書」という書体は、中原や華北平原から朝鮮半島を経由して日本に伝わっている。日本国内に見られる石刻には、この当時の中国国内で書かれていた文字に極似している文字がある。また、日本では奈良時代以降中国の東晋時代に活躍した王羲之の書の影響が強まるが、これを脱却するのが明治時代である。この時期に日本に流入した碑石拓本は、北朝時期の石刻資料が多いのが特徴である。時間的にも距離的にも離れているように思える二地点であるが、中国の中心地域から周辺への漢字の伝承は確実に行われている。
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