研究課題/領域番号 |
16K02244
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研究機関 | 愛知県立芸術大学 |
研究代表者 |
山本 裕之 愛知県立芸術大学, 音楽学部, 准教授 (70361037)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 4分音 / 微分音 / ピアノ / 錯聴 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、4分音の衝突、すなわち異楽器間で4分音がぶつかることによって、音の聞こえ方に「歪み」が感じられる現象の効果について明らかにし、微分音の「第3の用法」として作曲作品への応用を提言することである。特にどのような条件によって「歪み」が最大限に発揮されるのかを明らかにすることを研究の主目的としている。 ピアノと他楽器間で起こす4分音の衝突による音(音響)を人が聴くと、本来は音律が固定されているはずのピアノの方に歪みを感じるという人が少なくないことが、これまでの経験より明らかになっていた。それがどのような条件下で効果的に起こるのかを明らかにすることが、平成28年度の調査および目的であった。 平成29年度は、前年度に行った調査のデータを引き続き解析し、考察した。具体的には、収集したデータを集計し分析するとともに、当該知覚現象が起こる箇所の波形をスペクトログラム解析を行った。その結果、当該知覚現象は物理現象をそのまま反映したものではなく、何らかの「錯聴」によって引き起こされたものであることが分かった。また、当該知覚現象はピアノと他楽器の鳴りが同時の時に起こるか、ピアノが他楽器に遅れて鳴ったときに効果的に発生する一方で、ある条件下ではその効果が薄まってしまうことも明らかになった。 これらの結果を踏まえ、平成30年度は実際に「歪み」を最大限に応用した作曲作品を制作、録音し発表する。なお平成29年度末には検証実験も実施しており、その解析も合わせて実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は計画がいくらか遅れていたが、平成29年度には順調に進展した。平成28年度の結果によっては平成29年度に、当該現象の原因を調査するため、認知心理学者やピアノの調律師といった専門職の協力者へのインタビュー等も予定していた。しかし本研究の主目的である、「当該知覚現象がどのような条件で効果的に起こるのかを明らかにすること」が順調に進展したことにより、彼らへのインタビューの必要性がなくなったと判断したためである。また当初予定していなかった「検証実験」も年度末に実施できた(平成30年度中に分析予定)ことによって、前年度の調査(本調査)の裏付けが期待できる状況にある(ただし分析はまだ行っていない)。そのため、本研究は「概ね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は前2年間で明らかになった研究成果を「形」にする予定である。具体的には楽曲を制作し、録音する。そのための奏者および録音会場等の手配は既に進めている。平成28年度に行った「予備調査」で用いた楽曲5曲とともに、11月中旬に都内で録音し、CDの形にし、本研究の成果発表とする予定である。この計画については、本研究の当初の予定通りであり、特に変更の予定はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は予定していた出張(専門家へのインタビュー等)が必要なくなり、また研究室でのデータ集計および解析が中心となり、想定されていたほどの支出とならなかった。一方、平成30年度は成果発表に向けて、研究協力者(演奏者、録音技術者等)への謝金の支払い、またそれにかかる諸経費(録音およびリハーサル会場代、交通費等)が想定を上回る見込みとなっている。そのため、平成29年度の未使用金を回して補填する計画である。
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