研究課題/領域番号 |
16K02246
|
研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
前島 美保 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 客員研究員 (40436697)
|
研究分担者 |
土田 牧子 共立女子大学, 文芸学部, 専任講師 (30466958)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 歌舞伎囃子 / 伝書 / 劇書 / 歌舞伎音楽 / 近世 / 近代 / 日本音楽史 / 囃子方 |
研究実績の概要 |
平成29年度は『演劇拍子記』(早稲田大学演劇博物館所蔵)とその類書の検討に焦点を当てた。 『演劇拍子記』は、明治40年春、歌舞伎囃子方六合(郷)新三郎によって筆写された冊子本(一冊)で、囃子名目241項を列挙し、その用法や使用楽器等を時に朱筆で書き込みしながら詳細に記してある。来歴ははっきりしないが、書名や序詞の署名、列挙された囃子名目等からは、三世桜田治助著として知られる『拍子記』との関連がまず想起される。『拍子記』は、治助原本は不詳だが、川尻清潭が昭和15年7月『演芸画報』に「芝居なんでも帳」(一)として掲載し、のちに『芝居おぼえ帳』(国立劇場調査養成部・芸能調査室、昭和53年)に再録されたものが広く知られている。その他にも、望月太意之助『歌舞伎の下座音楽』(昭和50年)に翻字された『拍子記』(文久2年)、伊原青々園が昭和9年に写した竹柴進三(其水)筆写本『拍子記』(早稲田大学演劇博物館所蔵)等、『拍子記』の諸本はいくつか存在する。これら諸本間で囃子名目の立項順に多少異同があるものの、項目数は約120とほとんど変わらない。ただし『演劇拍子記』と比較すると、項目数の点で大きく異なる。一方、川尻清潭が昭和15年9月『演芸画報』に紹介した『美都拍子』というものが別にあり、こちらは226項目、立項順も『演劇拍子記』に近い。また『美都拍子』の序詞署名から『演劇拍子記』との関連性を窺い知ることができるのだが、これら一連の史料の来歴や影響関係、系譜等については、今後さらなる検討の必要がある。 『演劇拍子記』で興味深いのは六合新三郎自身の加筆箇所で、主に狂言作者に伝えられた『拍子記』諸本や『美都拍子』との違いがここにある。現在の用法に定着する以前の歌舞伎囃子の姿(あるいは見失われた用法等)が『演劇拍子記』には散見されるが、こうした各項目の詳細な検討も今後の課題として残されている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は18回の研究会のほとんどを『演劇拍子記』の翻刻や『拍子記』類の調査・検討に充てた。当初の想定以上に『拍子記』類の存在がわかり、『演劇拍子記』を位置づける上でも収穫だったものと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度にあたり、研究の総括を行う予定である。研究分担者らと協力して、定期的かつ集中的に研究会を開きながら、上述の残された検討課題、未翻刻史料の検討、報告書の作成等を着実に進めるつもりである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、当初予定していた史料調査費がおさえられたこと、出張旅費が発生しなかったこと、等が挙げられる。 これら次年度使用額については、次年度作成を予定している報告書の印刷費、史料等の複写費、および研究協力者への謝金等に充てることを計画している。
|