平成30年度は昨年度に引き続き、奄美諸島北東に位置する喜界島の八月踊り旋律と奄美大島の八月踊り旋律の比較分析作業を推し進め、昨年度の学会発表(奄美沖縄民間文芸学会喜界島大会)で暫定的に作成・公開した「奄美大島・喜界島八月踊り旋律比較表」のチェック作業を進めた。 それと同時に、これまで未公開である八月踊り旋律の資料公開に向けて楽譜作成作業を進めていった。喜界島では、昨年度の学会発表(前述)において比較分析用資料として取り上げた7集落(小野津、城久、赤連、荒木、上嘉鉄、阿伝、佐手久)の八月踊り旋律延べ98曲の楽譜のコンピュータ入力及び浄書作業を進めた。この結果、第一弾として赤連、上嘉鉄、阿伝集落の八月踊り旋律の採譜資料を令和元年度中に公開する予定を立てている。この作業によって、喜界島全域に伝わる八月踊り旋律について、奄美大島八月踊り旋律との異同・伝播関係の概略がほぼ把握できたと考えている。 奄美大島では、昨年度の学会発表(前述)において比較分析用資料として取り上げた7集落(瀬戸内町嘉鉄、宇検村湯湾、大和村今里、旧住用村西仲間、龍郷町秋名、旧笠利町用、旧笠利町笠利1区)の八月踊り旋律の中で未だ採譜資料が公開されていない宇検村湯湾、旧笠利町用の八月踊り旋律延べ58曲の楽譜のコンピュータ入力及び浄書作業を進めた。この結果、両集落の八月踊り旋律の採譜資料を令和元年度中に公開する予定を立てている。 残された課題としては、第一に旋律の比較分析作業が奄美諸島の徳之島、沖永良部島、与論島については分析作業が不十分のまま残されていること。第二に、トカラ列島以北の島嶼の民謡旋律については旋律の存在確認のみに終わり、本格的な分析作業に至らなかったことが挙げられる。
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