研究課題/領域番号 |
16K02248
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研究機関 | 東日本国際大学 |
研究代表者 |
田中 みわ子 東日本国際大学, 健康福祉学部, 准教授 (10581093)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 障害 / 身体表現 / 美学 / アール・ブリュット / 芸術実践 |
研究実績の概要 |
本研究は、障害者の芸術表現における「美学」が生起する創造的な場について、実証的かつ理論的に調査研究を行うことを目的とするものである。2年目となる平成29年度は、昨年度実施できなかったベルギーの知的障害者によるクレアムの芸術実践について実地調査を行った。また、障害者アートの潮流のひとつでもあり、クレアムの芸術実践にも大きな影響を与えたと考えられるアール・ブリュットについても現地に赴いて調査を行い、クレアムとの関連を探った。 今年度の大きな成果は、実地調査により現在の知的障害者の芸術実践をめぐる動向について直截的に把握できたことがある。とりわけ、クレアムにおいては、絵画、音楽、演劇、サーカスなど多様な表現形態を実践しているため、その全体像および個々の実践についてはクレアム内部においても捉えがたい現状がある。関係者からの聞き取り調査や参与観察により、現在のクレアムでは、知的障害のあるアーティストに加えて、精神障害のあるアーティストの参加が増えてきていることや、表現の「美学」が生起する際のアプローチについても洞察が得られた。 現在は、昨年度実施した文献研究の成果および今年度の実地調査から得られたデータをもとに分析作業を行い、ベルギーにおけるアール・ディフェランシエの活動展開を、美術史の文脈と障害学の文脈のもとに位置づける試みを行っている。なお、本研究の実績として、昨年度末に口頭発表した内容が刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実地調査を9月に実施したことにより、年度中での論文執筆作業が遅れたことが理由である。またイギリスを予定していた調査については、本務校での業務により日程調整ができなかったことから取りやめている(なお当初の計画で予定していたインドネシアについては他研究費により3月に実施した)。 現在は、研究成果を論文として執筆する作業が残っており、最終年度となる次年度中には一定の成果としてまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度となる次年度は、研究成果のまとめを中心に行う予定である。研究目的はほぼ達成できる見込みではあるものの、成果発表や論文の執筆については予定よりも進捗が遅れており、速やかに研究計画を実施する予定である。 研究を遂行するうえで課題となっているのは、校務等により長期実地調査が実現し難いことである。そこで、できる限りこれまでの実地調査のデータをもとに研究を進める予定である。また、国内における研究者や障害者アートの研究者、文化人類学者と意見交換を行っていくことにより、研究の妥当性についても検討していく。 近年、日本においても障害者アートの動向はめまぐるしく変化している。障害の「美学」が生起する創造的な場のありようを、社会的文化的背景と関連づけて考察していくことは、そうした現在の日本の状況を考えるうえでも示唆に富むはずであり、本研究をさらに発展させていく土台となるものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
ベルギー調査に係った費用のみを旅費として計上していることから予定額との差額が生じている。また、人件費および謝金が不要となったことも次年度使用額が生じた理由である。なお、物品費は調査に必要な物品の購入および資料代に充てた。 使用計画については、研究成果の発表のための旅費や複写費用などに用いる予定である。また資料等の購入については予定通りに経費を使用する予定である。
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