本研究は、ベルギーの知的障害者の団体クレアムの提唱した「アール・ディフェランシエ」を事例とすることによって、障害者の芸術表現における美学が、表現の創造現場における人々の相互関係性の中から創出されていること、そしてそのような創造的な場が形成される文化的背景には、障害者アートの潮流との関連性があることを考察したものである。主に欧米を中心とする障害者アートの潮流において、障害の美学は、障害の経験から生まれる美の表現(形態の美学)に見出されてきたが、クレアムにおいては、創造性それ自体を即興表現によって体現するところに美学が見出される(即興の美学)ことも明らかとなった。
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