• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

アレクサンドル・チェレプニンの中国と日本における活動及び作品への影響の再検討

研究課題

研究課題/領域番号 16K02250
研究機関日本大学

研究代表者

高久 暁  日本大学, 芸術学部, 教授 (20328769)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード20世紀西洋音楽史 / 楽譜出版 / チェレプニン / 伊福部昭 / チェレプニン・エディション / 近代日本音楽史 / ロシア音楽史 / 外来音楽家
研究実績の概要

①アレクサンドル・チェレプニンの出資・編集・監修のもとで出版された楽譜叢書「コレクション・アレクサンドル・チェレプニン(CAT)」の出版実態に関する論文を執筆・公開した。特に研究者が再発見した楽譜(CAT No.40 伊福部昭《盆踊り バレット》)について、妻ルイジーンの日記も資料として援用して作品の特性、作曲者の創作史上の位置付け、成立事情について考察した。②多くのCATを所蔵するバイエルン州立図書館(Bayerische Staatsbibliothek、ミュンヘン)及びベルリン州立図書館(Staatsbibliothek zu Berlin、ベルリン)の音楽部門において所蔵楽譜を調査した結果、発行元の龍吟社音樂事務所で記入されたと考えられるスラー等が含まれている楽譜を発見した。またバイエルン州立図書館の所蔵楽譜には入手日時や入手元の記載されているものがあり、CATの流通の推定に役立った。③チェレプニン夫妻が日本滞在中に定宿とした箱根・宮ノ下温泉の富士屋ホテルの刊行物や社史等の諸資料を調査した結果、チェレプニンの滞在中にホテルで開催されていた「盆踊り」やホテルで発行されていた英文の日本文化紹介記事が、チェレプニンの日本の伝統行事や文化の理解に有力な情報源となっていたことが判明した。④パウル・ザッハー財団(Paul Sacher Stiftung、バーゼル)のチェレプニンのアーカイヴに所蔵されているCAT関連の作曲家・音楽評論家(湯浅永年、三浦淳史、伊福部昭、清瀬保二、松平頼則、荻原利次、江文也、劉雪庵)の手紙の文面をデジタル化した。⑤戦前期の日中の音楽雑誌・新聞・音楽家の著作などを検討し、CATについての言説を収集した。⑥以上の成果を踏まえ、CATに関するカタログの作成に着手した。⑦チェレプニンがCATに関連する作曲家・音楽評論家に宛てた手紙は発見できなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度の研究計画として挙げた項目がおおむね達成されたため。さらに、チェレプニン夫妻が日本滞在時に定宿とした富士屋ホテル(及び富士屋ホテルと提携関係にあったホテル)がチェレプニンの日本文化の認識に大きな影響を与えていたことが判明し、チェレプニン研究に新たな視点をもたらす展開が得られたため。

今後の研究の推進方策

①チェレプニンが日本滞在中の定宿とした富士屋ホテルにおいて具体的にどのような音楽活動を行っていたかについては、作曲者や妻ルイジーンによる断片的な情報を除けば、従来まったく考えられていなかった。この点を解明するための調査を実施する。
②チェレプニンが日中の音楽家・音楽評論家に宛てた手紙について、引き続き発見に努める。
③CAT及びチェレプニンに関する日中の作曲家の言説を引き続き収集する。
④チェレプニンの未発表論文「日本音楽についての文章のスケッチ Sketch of an article on Japanese Music」を訳文と注釈付きで公表する。
⑤チェレプニンとともに日中のグランド・ツアーに同行し、CAT出版の実際の出資者だった最初の妻ルイジーン・ピーター・ウィークスとウィークス家について、ウィークス家の地所として知られるアメリカ・ニューヨーク州アイスリップIslipでの実地踏査を含めた調査を行う。
⑥チェレプニンの創作における日本音楽及びCATに収録された音楽作品からの影響について、ザッハー財団のチェレプニン・アーカイヴに保存されている日本滞在期間中のスケッチ、またバレエ音楽《女とその影 La Femme et son ombre》ほかの作品のスケッチや自筆譜を調査し、分析的な解明を行う。

次年度使用額が生じた理由

①2017年3月に東京芸術大学音楽学部で行われた国際学会(IMS 2017)において発表を行うことになり、研究当初に予定していたパウル・ザッハー財団におけるチェレプニンのアーカイヴ調査を行わなかったため。
②研究に必要なチェレプニン作品の古楽譜、コレクション・アレクサンドル・チェレプニン等の龍吟社音樂事務所から出版された古楽譜、研究遂行上参照が求められる龍吟社ほかの戦前期の日本の音楽出版社から出版された古楽譜を思うように発見することができなかった上、購入にふさわしいものも少なかったため。

次年度使用額の使用計画

パウル・ザッハー財団及びアメリカ・ニューヨーク州アイスリップでの調査の旅費・滞在費用、また今後出現する可能性が十分にあるを考えられる前項②に挙げた絶版古楽譜類、さらにチェレプニンの日本及び中国での音楽活動や滞在に関する資料の購入費に充当する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] コレクション・アレクサンドル・チェレプニン再考(2)―一次資料から見た出版の実態2017

    • 著者名/発表者名
      高久 暁
    • 雑誌名

      日本大学芸術学部紀要

      巻: 65 ページ: 65-83

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Concerts for Life and Survival: Eta Harich-Schneider's concert activities during her sojourn in Japan between 1941 and 19492017

    • 著者名/発表者名
      Takaku, Satoru
    • 学会等名
      IMS(International Musicological Society), 20th Quinquennial Congress in Tokyo
    • 発表場所
      東京芸術大学音楽学部
    • 年月日
      2017-03-23
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi