パウル・ザッハー財団(バーゼル)所蔵のアレクサンドル・チェレプニンのアーカイヴにおける資料調査がほぼ終了した。チェレプニンが生涯に幾たびも執筆を試みた自叙伝の草稿すべて、さらにチェレプニンが1930年代末から1940年代にかけて執筆した中国音楽に関する未出版の論文9編を重点的に調査した。自叙伝草稿の中で当該研究に最も重要な資料は1899年から1937年までの出来事と所感がチェレプニン自身によって詳細に記述された"Second (Personal) Autobiography"であることが判明、今後のチェレプニンの日本及び中国での音楽活動に関する研究はこの資料を基礎に行われる必要がある。また、アーカイヴに所蔵されているチェレプニンの二番目の夫人ミンがチェレプニンの没後、日本や中国の音楽関係者と交わした書簡をすべて調査した。 フランス国立図書館で同館所蔵のチェレプニン楽譜を実見して来歴を調べ、フランスの音楽家複数へ宛てたチェレプニンの書簡を検討した。また、チェレプニン楽譜として出版が予定されながら、1948年にパリの楽譜出版社から刊行された劉雪庵《中国組曲Chinese Suite》を実見の上調査した。 12月23日から25日まで上海音楽学院で行われた"Tcherepnin Art Week"の研究集会"Alexander Tcherepnin and Professional Music Education in China"に招待され、講演"The Publishing Management of Collection Alexandre Tcherepnine"を行った。 さらにニューヨークとモスクワでの最終的調査を計画したが、新型コロナウイルスの世界的蔓延によって渡航不可能となり、関連してチェレプニン楽譜のカタログ・レゾネの作成も遅延し、研究費に余剰が生じざるを得なくなった。
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