研究課題/領域番号 |
16K02259
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
野田 由美意 北見工業大学, 工学部, 准教授 (00537079)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 美術史 / ナチス時代 / デュッセルドルフ近代美術 |
研究実績の概要 |
平成29年3月、成城美学美術史学会で研究発表した内容を、論文「オットー・パンコックの木炭画連作《受難》――制作の背景――」(『成城美学美術史』(成城美学美術史学会)第24号、平成30年3月、75-93頁)にまとめ、刊行した。 また平成29年度の主たる研究として、ドイツ共産党(KPD)に所属する立場からナチスに抵抗を試みた《若きラインラント》のメンバーの一人、カール・シュヴェーズィヒの作品と芸術活動を検証した。シュヴェーズィヒはKPDに所属しナチスに対する抵抗運動を行ったことから、1933年に逮捕され、デュッセルドルフの「シュレーゲル地下牢」で拷問を受けた。解放後ベルギーに渡って、人々がいまだ気づいていないナチスの恐怖政治の実態を知らしめるべく、連作《シュレーゲル地下牢》を制作し、展示活動を行った。戦後、彼の作品は省みられることなく、その再評価と資料の発掘は「歴史家論争」の起こった1980年代に始まる。今日に至るシュヴェーズィヒの研究では、彼の遺した手記に基づいてナチス時代の活動の経緯を追究することに主眼が置かれ、作品自体の分析がいまだ不十分といえる。私は特に連作《シュレーゲル地下牢》を中心に作品の分析を行い、制作の背景を考察した。その際「若きラインラント」のメンバーで同じくKPDに所属し交友関係にあったペーター・ルートヴィヒスなどの作品や活動も比較の対象とし、歴史記録としての絵画の意義や、彼らの作品における芸術の批判的な力について追究した。その研究成果を、論文「カール・シュヴェーズィヒ線描画連作《シュレーゲル地下牢》 ――制作の背景と作品の受容史について――」(『人間科學研究』(北見工業大学)第14号、平成30年3月、1-22頁)としてまとめた。そのためにデュッセルドルフの市立博物館やギャラリー・レマート・アンド・バルト等で作品と資料の調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度から29年度にかけては、デュッセルドルフの近代芸術家グループ「若きラインラント」のメンバーの、ナチス時代の芸術活動を取り上げるにあたって、ナチスに抵抗を試みた画家たちの活動を中心に検証した。そこで研究計画として、28年度はオットー・パンコック、29年度はカール・シュヴェーズィヒの研究を予定していたが、その計画通りに順調に進展している。その研究成果をそれぞれ論文にまとめて刊行した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究として、「若きラインラント」の画家たちとナチス時代のデュッセルドルフにおける展覧会の関係について取り上げる。 デュッセルドルフで行われた各展覧会のカタログや新聞・雑誌記事の調査を通じて、展覧会主催者はナチスが芸術に求めたことを実際的にいかに展覧会に反映させたのかを考察する。またそこにやむを得ず、あるいは進んで出品した「若きラインラント」芸術家たち――カール・ラウターバッハ、ヴィル・キュッパー、カール・バルト等の、展覧会参加の背景を調査する。そのためにデュッセルドルフ芸術アカデミー、芸術宮殿美術館等で作品と資料の調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍購入の一部に遅れが生じたため、残額が生じた。次年度に、前年度購入が遅れた書籍を購入する。
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