研究実績の概要 |
令和4年度は、岐阜県の美江寺観音(岐阜市・4月18日)の天喜寺(大垣市・4月21日)、薬師寺(岐阜市・6月1日)の薬師如来坐像の写真撮影を行った。いずれも裳懸座が非常に長く引き伸ばされているという際立った特徴をもっており、衣襞の数が少しずつ増えて行く傾向にあるので、美江寺観音→薬師寺→天喜寺の順で制作された可能性が高い。白鳥神社と千虎自治会(いずれも郡上市・6月23日)蔵の不動明王坐像は、1679年の銘がある2体の不動明王坐像(円空ふるさと館蔵)と様式的に非常に近く、妙義神社(群馬県富岡市・6月18日)の不動明王坐像にも似ているため、翌1680年に始まる円空の関東への旅が東海道ではなく中山道経由であったことを確証することができた。長江院の韋駄天像(海津市・6月27日)は、不断寺のもの(三重県伊勢市)と顔つきがまったく異なっているが、それは目の周りの皺の有無は様式の変化ではなく、表情の違いを表していると考えられる。滋賀県では、大平観音堂の十一面観音像と光明院の不動明王立像(いずれも米原市・5月21日)の写真撮影を行った。光明院の不動明王立像は、笠松歴史未来館蔵(6月9日)や光了寺(茨城県古河市・6月17日)のものと比べると、衣服下部の襞が松毬状になっており、飛騨における作仏に近いことが分かる。三重県では、法住院(伊勢市・6月4日)で円空作とみられる不動明王坐像が新たに発見され、三重県博物館で開催の「三重の円空展」で初めて展示された。また”Zen come ideale di vita e dell’arte”(人生と芸術の理想としての禅)と題した国際学会(フィレンツェ4月2日・3日、Zoom開催)で、”Enku, l’avanguardia del periodo Edo”(円空―江戸時代の前衛)という自作の映像作品を上映し、円空の芸術的特質について論じた。
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