研究課題/領域番号 |
16K02268
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
下原 美保 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (20284862)
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研究分担者 |
山下 善也 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部文化財課, 主任研究員 (40463252)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 住吉派 / 模写 / 近世御用絵師 / 松浦静山 / 新増書目 |
研究実績の概要 |
1 作品調査・情報交換会等:2017年4月20日に、住吉大社(大阪市住吉区)にて後水尾天皇と住吉大社、同社と住吉派興隆の関係についてご助言いただいた【研究代表者・下原】。2017 年7月16日に、多摩霊園にて住吉家や分家であるい板谷家、親戚筋である高木家の墓碑の調査を行った【下原】。2017年11月2日に、「長澤蘆雪展」(愛知県立美術館)の熟覧・調査を行なった。蘆雪は『新増書目』に登場する住吉広行・広尚らと同時代の絵師である【研究分担者・山下】。2017年12月13日・14日に、松浦史料博物館(平戸市)にて松浦静山著『新増書目』、松浦家に伝来する住吉・板谷派・狩野派の作品・模写類を調査した。調査中は本科研の研究協力者である同館学芸員久家孝史氏より同館所蔵作品・資料の伝来についてご助言いただいた。調査後、近世御用絵師の作品及び活動に関する情報交換会を行なった。【下原、山下、研究分担者・久家】 2 史料の翻刻・住吉派の模写に関する記事の抽出:昨年度に引き続き、研究代表者である下原が中心となり、松浦静山著『新増書目』の翻刻(住吉・板谷家関連部分)や松浦静山著『甲子夜話』における住吉・板谷派関係の記事の抽出を行なった。【下原】 3 その他:研究成果の公開として、下原は2017年9月11日に講演会「住吉派の絵師 如慶と具慶について」(住吉大社)を、山下は2017年4月8日に東京国立博物館桜セミナー「桜の絵にみる美と心」(東京国立博物館平成館大講堂)と2018年1月27日に講演会「狩野派を知る見る楽しむ」(根津美術館)を行った。【下原・山下】
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は当初の研究計画に基づき、以下の通り遂行した。 調査については、これまで未着手であった住吉家・板谷家・高木家の墓碑の調査を行った(2017年7月16日)。寸法等の確認はできたものの、墓碑銘については摩耗が激しく、解読できなかった。拓本をとるなど新たな手段を検討する必要があると思われる。また、本研究の中心的資料・作品を松浦史料博物館で行い(2017年12月13日・14日)、収集したデータについては下原が整理し、研究分担者と共有した。松浦静山著『新増書目』等の模写関連記事と同館所蔵の作品・資料との照合については概ね完了している。また、『甲子夜話』をはじめ、同時代における画論書類(「住吉家旧記類」ほか)にも注目し、住吉・板谷派関係の記事も抽出している。 松浦史料博物館での調査の際、近世御用絵師の作品及び活動に関する情報交換会を行い(2017年12月13日)、2018年度に久保惣記念美術館において住吉派の展覧会が開催されることを確認した。この情報交換会では、平成30年度の研究計画についても話し合った。 この他、第70回美術史学会全国大会への参加(2017年5月19日~21日)、「狩野元信展」(サントリー美術館 2017年10月14日)、「桃山展 大航海時代の日本美術展」(九州国立博物館 2017年11月25日)等を見学し、近世御用絵師の絵画制作活動に関する見識を深めた。 以上のように、本研究は概ね順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
1 平成28・29年度に引き続き、住吉派関連資料や松浦静山の著作等より確認できる住吉派の摸写と絵画制作に関する記事を抽出し、データベースを作成する:平成30年度は松浦静山著『新増書目』における住吉派の摸写・鑑定に関する記事の翻刻を完了し、『甲子夜話』や「住吉家旧記」、『増補 考古画譜』等より同様の記事を抽出し、データベース化する。また、これらの記事と実際に調査した住吉家の作品や模写との照合、さらには狩野派における模写活動との比較を行い、近世御用絵師の絵画制作活動を具体的に明らかにする。【下原・山下】 2 住吉派の模写や作品の調査、住吉家の墓碑の再調査:平成30年度は(1)「住吉家粉本類」(東京藝術大学大学美術館)、(2)「住吉家印譜類」(京都工芸繊維大学)、(3)住吉如慶筆「木曾物語絵巻」(出光美術館)、(4)住吉家・板谷家・高木家の墓碑(多磨霊園)等の調査を行う予定である。 3 平成30年度の研究会開催(於 九州国立博物館)等:研究会(2019年3月予定)では、『新増書目』や『甲子夜話』、「住吉家旧記」、『増補 考古画譜』に見られる住吉派や板谷派の模写に関する記事と、両派や狩野派の模写や作品を照合・比較し、近世御用絵師における絵画制作の在り方を検討する。ここでは、下原や山下のほか、研究協力者である久家孝史氏より松浦静山の文治活動について、江戸時代後期における考証学の研究者である鈴木彰氏(立教大学)より松平定信文人サロンにおける住吉派の役割について助言をいただく予定である。【下原・山下・久家】
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