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2016 年度 実施状況報告書

キリスト教文化における神聖空間の形成と図像記憶をめぐる歴史人類学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K02275
研究機関青山学院大学

研究代表者

水野 千依  青山学院大学, 文学部, 教授 (40330055)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード記憶術 / イメージ論 / 聖像崇敬 / 礼拝像 / 儀礼 / 聖像譚 / 視覚的注釈図
研究実績の概要

第一の課題、神聖空間の形成と聖像儀礼については、隠蔽される礼拝像の聖性を視覚化する要素として、1)タベルナクルム、枠、マント、ヴェールなどのパラテクスト的装置、2)奇跡力を可視化する奉納像、3)聖像譚、4)儀礼という論点から考察を進めた。12月に参加したシンポジウム「〈祈ること〉と〈見ること〉」(成城大学)では、その成果の一部を、美術史家と人類学者との対話という形で開く機会を得た。
第二の課題、アルプス周辺に残存するキリスト教の特異な図像の残存と記憶については、研究途上ではあるが、成果の一部を雑誌論文に公表した。
さらに、解釈の方法論的試みとして、人類学者カルロ・セヴェーリの『キマイラの原理ーー記憶の人類学』を翻訳し、校了直前まで完成することができた。白水社より2017年6月に刊行される予定である。無文字文化における社会的記憶の形成と継承を、言葉とイメージの特殊な関係にみいだし、顕著さと秩序、客体的・再帰的パラレリズム、キマイラ的イメージと主体の重層決定など、西洋とは異なる独自の記憶技術のあり方を解明したセヴェーリの研究は、地域研究の枠を超えて記憶とイメージの問題を一般的次元で理論的に掘り下げており、西洋の事象に立ち戻って考察を進める上でもきわめて示唆に富むものであった。
この糧をもとに、アルプス周辺の特異なキリスト教図像と記憶の問題、さらに西洋中世に遡る視覚的注釈図と記憶術的イメージの問題の考察も一定の考察を重ねている。
今年度、海外調査を行うことはできなかったが、いずれの問題系についても、文献や図像の調査は予定どおり進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

共著や翻訳の仕事などで現地調査の時間的余裕がなかったが、文献、図像調査は概ね順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

今後は、アルプス周辺に残る「主日のキリスト」を記憶術的視点から考察を試みる。また、中世以降の視覚的注釈図の問題も、図像データの収集、関連文献の読解を進めていく。
神聖空間の生成と儀礼については、本来生命をもたない物質たる像が息づく現象に焦点を当て、無機的なものの行為主体性を人類学的視点も加味しつつ考察する。この問題については、アルフレッド・ジェル、カルロ・セヴェーリ、その他、アクターとしてイメージを捉える理論の妥当性も批判的に検証し、文化を横断した議論へと発展させることも視野に入れたい。
今年度果たせなかった現地調査も実現させる予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 書評 桑木野幸司氏著『叡智の建築家ー記憶のロクスとしての16,17世紀の庭園、都市、劇場』2016

    • 著者名/発表者名
      水野千依
    • 雑誌名

      都市史学会

      巻: 3 ページ: 133,141

  • [雑誌論文] キリスト像のキマイラ的変容ーーイメージの記憶をめぐる歴史人類学的試論2016

    • 著者名/発表者名
      水野千依
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 44-5 ページ: 282,305

  • [図書] 西洋美術の歴史 4 ルネサンス12016

    • 著者名/発表者名
      水野千依、小佐野重利、京谷啓徳
    • 総ページ数
      663
    • 出版者
      中央公論新社

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公開日: 2018-01-16  

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