中世末からルネサンスのキリスト教文化における聖像の機能を二つの事例を中心に歴史人類学的に考察した。 (1)トスカーナ地方における聖母像崇敬において、聖なるモノ(聖遺物や聖像)が、パラテクスト的装置(枠縁、ヴェール、マント、聖遺物容器、タベルナクルム)、 聖像譚、聖像儀礼によって、いかに神聖空間(ヒエロトピー)を複合的に形成するかを明らかにした。 (2)アルプス周辺の文化的周縁地に残存する特異な図像「主日のキリスト」の形成・変容・融合・解体に注目し、罪や贖罪の観念を想起させる記憶術的イメージとしての機能を指摘した。またこの像に複数の形象の記憶が圧縮されている点を他文化圏の関連する像と比較考証した。
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