研究課題/領域番号 |
16K02276
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
長佐古 美奈子 学習院大学, 付置研究所, 学芸員 (20537279)
|
研究分担者 |
吉廣 さやか 学習院大学, 付置研究所, 学芸員 (30726584)
千葉 功 学習院大学, 文学部, 教授 (50327954)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 明治 / 皇室 / 華族 / 工芸品 / 食器 / ボンボニエール / 国産奨励 / 伝統文化 |
研究実績の概要 |
本研究は皇室関連工芸作品に対し、今までの美術史的観点に加え、技術史的視点、歴史資料としての視点を加えた3方向から工芸作品を読み解き、近代皇室の工芸作品の成立から使用(下賜、配布)に至る過程(フローシステム)を明らかにしようとするものである。 今年度は昨年度に続き、侯爵山階家および山階宮家史資料のリスト(目録稿)作成作業を行い、ほぼ完成を見た。さらに平成29年10月に伯爵寺内家より資料の追加寄贈を受けたので、研究分担者の千葉功を中心にリスト(目録稿)作成作業及び翻刻作業に着手している。 今年度も引き続き、宮家、旧宮家、旧華族家に所蔵されている下賜品や食器等皇室関連作品の調査を行った。さらに研究協力者の小松大秀・岩壁義光、研究分担者の吉廣さやかと共に「華ひらく皇室文化―明治宮廷を彩る技と美」展、「黎明期の学習院―神田・虎ノ門の頃」展の企画・開催に関わったことにより、より多くの作品を調査する機会を得、成果を発表することも出来た。また、アイルランド・チェスタービーティライブライリーのメアリー・レッドファーン博士と研究協力者長佐古真也の協力により、現在宮中晩餐会で使用されている食器と同形態のものの調査を行った。その結果、昨年度明らかにした皇室洋食器の国産化成立過程の前段階として、日本皇室では明治8年(1875)に英国王室を模倣した食器を輸入していることを明らかにすることが出来た。 昨年度・今年度の調査を通じ、明治皇室が「国産品・日本の伝統文化保護育成」をキーワードとし文化的活動を積極的に行っていることを確認出来つつある。 上記と並行して、韓国において寺内伯爵家資料の関連調査、特に「李王家美術品製作所」の文献調査を行い、李王家ボンボニエールに関連する文献の翻刻作業も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、平成30年度に学習院大学史料館で開催予定であった「近代皇室の美術工芸品(仮)」展とほぼ同様の内容である「華ひらく皇室文化―明治宮廷を彩る技と美」展を平成30年4月17日より全国巡回で開催することとなり、前倒しで且つ大規模に全国の皇室関連作品及び史料を調査研究・公表する機会が得られたことにより、当初の計画以上に進展することとなった。具体的には、各所蔵館・個人の作品の来歴を調査し、展覧会に出品するものについてはデジタル撮影、作品解説の執筆、図録掲載、展示を行った。 また来歴を調査するため今年度も宮内庁宮内公文書館所蔵『御用度録』『用度録』等のうち計130冊の撮影を行った。 明治初期の下賜工芸品に見られる「布」、特に琉球関係織物について、明治皇室工芸品の中で琉球工芸品が果たした役割について、研究報告も行った。 当初の予定になかったが、平成29年度にアイルランド・チェスタービーティライブライリーのメアリー・レッドファーン博士との共同研究を行ったことにより、英国王室と日本皇室との関連というより広い視点を得ることが出来ている。 また研究対象である寺内伯爵家から追加で史料の受け入れを行ったことで、さらに目録稿作成・翻刻作業は増加したが、研究対象が多いに広がっている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度・29年度に行った各地の旧宮家、旧華族家に所蔵されている工芸品や食器等皇室関連作品の調査を引き続き行う。さらに該当作品の来歴に関する史料を、宮内庁宮内公文書館所蔵史料より見出す作業を今年度も引き続き継続する。 当初今年度は、成果を広く社会・国民に情報発信するため展覧会「近代皇室の美術工芸品(仮)」展を開催する予定であったが、研究実績の概要・現在までの進捗状況で述べた通り「華ひらく皇室文化―明治宮廷を彩る技と美」展をすでに開催し、成果発表をしているため、独自の視点を盛り込んだ当館での展覧会開催に向けた準備を行う。当館での同展覧会は平成31年3月から開催予定であり、この研究の成果発表の場としたい。参加者と会場の都合上、開催日は平成31年4月になる予定であるが、明治皇室工芸品に関するシンポジウムも開催する。 さらにまだ成果報告を行うまでに至っていないが、李王家美術品と琉球関係織物の調査も継続予定である。 侯爵山階家および山階宮家史資料、伯爵寺内家資料のリスト(目録稿)作成作業継続する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度中に何度か韓国調査を行う予定であったが、年度当初国際情勢が悪化していたため、1回のみの調査となったため。 平成30年度は各地の旧宮家、旧華族家に所蔵されている工芸品や食器等皇室関連作品の調査を引き続き行うために旅費、謝金を計上する。該当作品の来歴に関する史料を、宮内庁宮内公文書館所蔵史料より見出す作業を今年度も引き続き継続するため、謝金を計上する。また展覧会・シンポジウムを開催するための打合せ等の費用(雑品費・旅費等)を計上する。
|