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2018 年度 実施状況報告書

日本の七宝業の技法と製作環境に関する研究-明治期の並河靖之の七宝業を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 16K02285
研究機関京都造形芸術大学

研究代表者

武藤 夕佳里  京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (80388206)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード並河靖之 / 並河七宝 / 七宝技法 / 製作環境 / 七宝釉薬 / 技芸技術 / 明治工芸 / 近代窯業
研究実績の概要

「日本の七宝業と製作環境を明らかとする」ことを目的に、明治期の京都で並河靖之(1863・弘化3年~1927・昭和2年)の七宝業に着目し、史資料の検証と釉薬資料の科学分析を通じて研究を行っている。
近代七宝業は明治以降の国内産業を牽引した近代窯業の一端を担い、万国博覧会にて日本の優れた技量を知らしめ、その評価を国際的なものとした。七宝も殖産興業の奨励による伝統技法を活用した輸出工芸と目されてきたが、近世の生業を継承したものではなく、幕末に開発された尾張七宝の技法を基に京都や東京でも展開された新たな産業である。並河靖之と東京の濤川惣助(1864・弘化4~1910・明治43年)、二人の帝室技芸員を輩出し目覚ましい躍進をみたが、大正期には斜陽となり、現在の産地は尾張七宝が伝統的工芸品の指定となるのみである。さらに、需要が海外に傾向したため国内の七宝遺品が少なく、史資料も限られたため研究は低調であった。
七宝業解明の研究を行い、一端を『平成22‐24年 科学研究補助金基盤研究(C)明治期の技芸技術(工芸)活用による産業創生―京都七宝にみる産業クラスターの萌芽』(2013)とし、「並河家文書」ほかの史資料の翻刻や解析、横断的な整理を継続し、科学分析調査との総合的検証を試みている。“ON JAPANESE PIGMENTS”(高松豊吉 1878)の翻訳や尾張の塚本貝助(1828・文政11年‐1897・明治30年)の「塚本家文書」『明治二十三年 元調法簿 寅四月廿五』(1890)を翻刻、勲章や正倉院模造宝物の調査なども、東京学芸大学や奈良女子大学、元興寺元興寺文化財研究所とともに進めた。
近代七宝の史資料収集、学術研究を深めるため文化財保存修復学会、日本産業技術史学会、近代庭園研究会、国際近代陶磁研究会、家具道具室内史学会、国際日本文化研究センターほかの研究会などに参加した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

近代七宝業に関する研究は、日本の七宝研究全体が低調であったことから、先ずはより多くの史資料の発掘的調査が必須で、その上での検証が生じるため取り組むべき課題が多い。そのため、課題それぞれに調査を重ねながら次の展開を進めて行くことが望ましく、研究全体のバランスをみながら研究活動を行っている。また、科学分析調査については、調査対象資料の状況や所蔵先、協力組織などとの調整を要するため、実施日程が整わなかった。
また、平成30年度は研究代表者の事情により、当初予定していた研究計画を行うことが叶わず、研究全体に遅れが生じた。

今後の研究の推進方策

平成30年度に生じた後れを取り戻すため、引き続き、史資料の翻刻とデータベース化を順次行い、内容の解析を継続し研究会にて検証と考察を重ねる。「並河家文書」の翻刻を継続し、「明治三十四年三月 記事 七寶部」、「明治三拾九年五月より 商用発輸簿 並河店」、「明治四三年戌一月」などを行いそれぞれの解析を進め、史資料の複合的なデータの整理を行う。尾張の「塚本家文書」にみる『明治二十三年 元調法簿 寅四月廿五』(1890)の翻刻などを行ってきたが、新たに塚本貝助家所蔵の七宝釉薬資料の科学分析調査に取り組む。翻訳を行った“ON JAPANESE PIGMENTS”(高松豊吉 1878)からは並河靖之の明治初期の製作技法の一端が明らかとなってきたことから、関連する史資料を収集し検証と分析を進める。
これらは明治期の七宝の製作技法を含む製作環境をみるうえで貴重であり、尾張七宝の技法の解明は、京都における並河七宝の技法を見るうえで重要となる。「並河家文書」を中心とした史資料にみる人名の抽出と経歴に関する調査を行い、産業や文化を担った人物を抽出し、交流の広がりと役割を検証する。
釉薬資料に関わる史資料調査を裏付けるため、可能であれば七宝遺品の七宝釉薬や下画に使用された着際顔料の科学分析を行い、これまでの分析データとの照合するなど、明治期の七宝業において、釉薬の色彩をどのように獲得していたのかを知る手掛かりとしたい。
これまでの研究成果を取りまとめるための、分野を横断する研究会を開催し、可能であれば七宝研究の先端にある外国人研究者も交え研究交流を深める。分野をこえて行っている本研究活動は各分野の専門性に根差したものであるが、それぞれが柔軟な発想を持って取り組むことにより、新たな視点を得てきており、総合的な七宝研究研究の基盤を整える。

次年度使用額が生じた理由

平成30年度は研究代表者の事情により計画した研究活動が叶わず、年度使用額が生じた。しかし、先に研究の進捗、今後の研究の推進方策などで、報告してきた通り、史資料調査と科学分析調査の相乗的な研究を行うため、計画にそって研究を遂行していく。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 奈良女子大学所蔵正倉院模造宝物黄金瑠璃鈿背十二稜鏡の材料とその製作背景の研究2018

    • 著者名/発表者名
      六車美保、武藤夕佳里、新免歳靖、山田卓司、二宮修治
    • 雑誌名

      日本文化財科学会第35回大会研究発表要旨集

      巻: ― ページ: p362-p363

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 明治期の七宝製作技法―塚本貝助家文書に見る技法と勲章釉薬の検討2018

    • 著者名/発表者名
      新免歳靖、武藤夕佳里、高橋佳久、小林弘昌ほか
    • 雑誌名

      文化財保存修復学会第40回大会研究発表要旨集

      巻: ― ページ: p202-p203

    • 査読あり
  • [雑誌論文] “ON JAPANESE PIGMENTS”(高松豊吉 1878年)にみる並河七宝の釉薬2018

    • 著者名/発表者名
      武藤夕佳里、新免歳靖、高橋佳久、長沼暦
    • 雑誌名

      日本産業技術史学会第34回年会講演要旨集

      巻: ― ページ: p35-p38

  • [学会発表] 奈良女子大学所蔵正倉院模造宝物黄金瑠璃鈿背十二稜鏡の材料とその製作背景の研究2018

    • 著者名/発表者名
      六車美保、武藤夕佳里、新免歳靖、山田卓司、二宮修治
    • 学会等名
      日本文化財科学会
  • [学会発表] 明治期の七宝製作技法―塚本貝助家文書に見る技法と勲章釉薬の検討2018

    • 著者名/発表者名
      新免歳靖、武藤夕佳里、高橋佳久、小林弘昌ほか
    • 学会等名
      文化財保存修復学会
  • [学会発表] “ON JAPANESE PIGMENTS”(高松豊吉 1878年)にみる並河七宝の釉薬2018

    • 著者名/発表者名
      武藤夕佳里、新免歳靖、高橋佳久、長沼暦
    • 学会等名
      日本産業技術史学会
  • [図書] 武藤夕佳里「明治のニッポンにて、外国人がであった〈chanoyu〉と庭園『庭と建築の煎茶文化』2018

    • 著者名/発表者名
      編著 尼﨑博正、麓和善、矢ヶ崎善太郎
    • 総ページ数
      p182‐p204
    • 出版者
      思文閣出版

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公開日: 2019-12-27  

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