研究課題/領域番号 |
16K02296
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
閔 鎭京 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (80431386)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 韓国の文化政策 / 国主導 / 政治的関与 |
研究実績の概要 |
本年度の研究においては、文化政策に対する政治の関与度合の構造の変遷について調査を行った。 1948年に大韓民国政府樹立後、文化政策は文教部と公報部で担当し、芸術は文教部文化局で行っていた。しかし、1961年の組織改編により、公報部の中に文化宣伝局が設けられ、当局が舞台芸術政策を担当するとともに、国立劇場、国立国楽院も移管された。これは、韓国の文化政策に政治が介入した象徴的な政策の始まりであるといえる。その後、政権が変わるに当たって、国の政策と文化政策の関係性は次第にますます密接な関係になって来る。その一例をあげると、改憲時に「国家は伝統文化の継承発展と民族文化の創達に努めなければならないと」と国の文化振興義務を明記する(パク・ジョンヒ政権)、国の経済社会発展5か年計画に文化部門を盛り込む(ジョン・ドゥホワン政権)、大統領就任演説で国家基調政策として文化政策を提示する(キム・テジュン政権)、大統領のマニフェストに光州のアジア文化中心都市の基本構想を掲げる(ノ・ムヒョン政権)、大統領直属機関として文化隆盛委員会を設ける(パク・グネ政権)等がある。 これらは国の政策において文化政策の重要性を表し、益々文化政策に力点が置かれるようになっている一方では、国主導による文化政策への関与度が深まっているのは否めない。現政権に対して反対の政治思想を有しているアーティストへの支援が制約されるブラックリスト作成、国の文化施設や文化芸術団体のトップは財団法人になっても文化部長官が直接選任することになる等、文化政策の独立性が保たれないままに至っていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大統領政権を基軸に、文化芸術を担当する中央政府組織の変遷及び職務の分掌について職制をもとに調査・分析を行い、当該政権の文化政策の特色を導き出した。また時系列に、国の政策の中に文化政策が盛り込まれている政策(例:経済社会発展計画等)と国主導の文化政策(例:文化中興5ヵ年計画、文化発展10ヵ年計画、21世紀に向けた韓国文化のビジョンと戦略、文化ビジョン2000、創意韓国政策、未来の文化・文化の未来政策等)を調査し、その内容を把握した。これらの計画は限られた期間において集中的に建設された文化会館、文化院、文化の家等の文化施設の建設背景に関係しており、当時の大統領の政治に関連して行われていたことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、地域に対して国の政策がかかわっていた歴史的変遷を調査し、そのパタンの変化を分析する。また、アジア文化中心都市として国の政策が展開されている光州と一緒に、同時期に地域特化文化都市造成事業として指定された慶州(歴史)、全州(伝統)、公州・扶余(歴史)の政策を調べ、実態を把握し、問題点を明らかにする。そして、アジア文化中心都市の政策・光州市の文化政策の比較分析を行う。 なお、光州文化財団・アジア文化中心都市推進団・韓国の文化政策研究者等を招いてシンポジウムを行う予定である。地域において国主導による文化政策がもたらしたメリット及びデメリットについて話し、韓国の文化政策の特徴や今後の在り方が模索できるよう努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末まで出張をしていたため、残額について綿密に計算することができず、物品購入が間に合わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
残額の6,450円はトナーを購入する予定です。
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