研究課題/領域番号 |
16K02299
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
清水 知子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (00334847)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 動物 / 芸術 / 博物学 / 映像 / 表象 |
研究実績の概要 |
平成28年度は動物と芸術をめぐる基礎研究を行った。まずは現在の最新の理論的動向もふまえた上で基本的な問題を確認、整理した。ジャック・デリダ、ジョルジョ・アガンベン、ブライアン・マスミといった哲学的な動物論を検討するとともに、デミアン・ハースト、アンディ・ウォーホルなど動物を扱った現代の芸術家たちの作品の検討を行った。また北米における自然観、動物と表象芸術の関係をテクノロジーという観点からウォルト・ディズニーのネイチャー・フィルムの検討を行い『帝国と動物』(江藤秀一編、春風社)の第8章「動物と帝国―ディズニーと野生のファンタジーの行方」において考察の一部を執筆した。7月にはロンドン大学で開催されて学会にて研究状況の一部を発表した。同時にロンドンにあるGrant Museum of Zoologyの所長である動物研究者Jack Ashbyにインタビュー調査を行い、本博物館が開催したArt by Animals展覧会に関する貴重な証言をいただいた。動物と芸術をめぐって人類学と芸術が交錯する地平について今後さらに検証するうえできわめて意義の大きいインタビューになったと言える。また9月にはドイツのボン大学で、12月にはオーストラリアのシドニー大学で開催された国際学会において今年度の研究の一部を発表した。さらに動物および人間を統治する思想について理論的視座を得るうえで重要なウィリアム・ウォルターズ著『統治性ーフーコーをめぐる批判的な出会い』(月曜社)の一部を翻訳者として担当し刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は基礎研究の年度として位置づけており、文献収集とその検討を行い、その一部を共著として発表した。またロンドン大学で開催された映像とメディアに関する学会、ドイツのボン大学で開催された日独ワークショップにおいて「剥き出しの生」という観点から現代社会と芸術に関する発表を行い、貴重な意見交換を行うことができた。さらにシドニーで開催された国際学会においても発表を行い、海外の研究者から有益な示唆を得ることができた。平成28年度にロンドン大学で行ったインタビュー調査については現在考察を進め今年度中にその成果を国際学会で発表し、論文としてまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は芸術作品の分析と文献調査といった基礎研究を継続しつつ、同時にドイツのカッセル、ミュンスターで開催される国際芸術展、及びベネチア・ビエンナーレで展示される最新の芸術家、芸術作品と動物、エコロジーについての調査を進める。現地に赴きインタビュー調査を行う予定である。また平成28年度の研究成果を国際学会で発表し、その一部を論文としてまとめる予定である。
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