研究課題/領域番号 |
16K02301
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
山上 揚平 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (20637079)
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研究分担者 |
前島 志保 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10535173)
山本 美紀 奈良学園大学, 人間教育学部, 教授 (60570950)
白井 史人 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員 (20772015)
紙屋 牧子 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (20571087)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 雑誌研究 / 文化施設 / 芸術研究 / 関西モダニズム |
研究実績の概要 |
平成29年度は、前年度に引き続き研究会が構築してきた雑誌『会館芸術』のデータベースを基にした復刻版の刊行が順調に進められた。当年度は「戦中篇」となる昭和13年~19年にわたる全13巻が配本され、各巻にメンバーがこれまでの研究に基づき詳細な「解説」を準備した。 また関西・中部地方への取材・資料調査も前年度から継続して行われ、研究リソースの拡充が行われた。特に朝日会館および『会館芸術』とつながりの深い希少資料であるアサヒ・コドモ会発行の『コドモの本』の収集と電子化が進み、その成果を基にした当時のコドモ文化における朝日会館の役割に関する研究報告がメンバーにより定例研究会および複数の学会で行われた。 更にインタビュー調査では、元朝日会館長十河巌氏のご遺族や、氏の所属していた大学サークルのOBの方々とのコンタクトに成功し、当時の貴重な証言が得られると共に氏の残した手書き原稿や美術作品、写真等の遺品の調査も可能となった。これらの成果より、十河氏の業績および生涯についての新たな知見を得て、朝日会館の運営理念にもより深く迫っていくことが出来るようになったと考えられる。 当年度も研究会各メンバーの個人研究に関する進捗報告や、平成30年度に予定されている成果発表企画(展覧会企画、シンポジウム等)の準備の為に定例研究会(於東大駒場キャンパス)が継続され、前述のアサヒコドモ会に関する新しい調査報告をはじめ、是迄まとまった調査・研究の殆ど存在していなかった地方朝日会館(神戸、名古屋等)に関連する新情報などももたらされた。更に当研究会の成果を活用した国内外での学会発表や招待講演なども研究会メンバーによって活発に行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に始まる雑誌『会館芸術』復刻版の刊行が当年度も順調に進み、また新たに関連誌(紙)の資料整備も軌道に乗ってきた為、雑誌研究に関しては前年度から更に一層の進展が見られたと考えられる。また出張取材による地元紙調査の積み重ねより、大阪以外の朝日会館についても少しずつ事情が明らかになってきた。これらにより、より幅広い視野の下での「会館」の文化的役割の評価がこれ以降、可能になって行くと思われる。 一方で、当初の計画では平成29年度中の開催が望まれていた関西における展覧会企画による成果発表が、会場との交渉が難航した為、平成30年度にずれ込むこととなり、関連する予算運用等、幾つかの点で研究活動計画のまとまった見直しに迫られた。しかしながら、最終的にはより理想的な会場を抑えることができ、またその過程で関西文化研究の第一人者からの協力も得られる事となって、結果的には望ましい方向に進んだと考えている。 よって全体としては「おおむね順調に進展している」という現状認識がもっとも適当と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は最終年度であり、冬には成果発表として大阪大学に於いて展覧会企画とシンポジウムの開催が予定されている。展覧会企画に向けては、夏前をめどに各芸術・芸能ジャンル専攻の担当者を中心に出品物の最終選定を行い、これ迄の資料調査に基づいた展示解説パネルの作成を研究会で進める。シンポジウム企画には研究会外部からも地元関西の研究者を招聘して、パネル発表や関連企画(ギャラリートーク、講演、上映会など)での協力をお願いする予定であり、関西在住メンバーを中心にして引き続き調整作業を進めて行く。また研究会メンバーによる研究発表に関しては、秋までの定例研究会の場でメンバー全員による討議を経て内容が固められる予定である。更にこのシンポジウムの成果は論集という形でもアウトプットしたいと考えている。 またこれまでに研究会が行ってきた雑誌『会館芸術』に関する資料収集及び分析の成果は、前年度迄と同様、引き続き「復刻版」の刊行という形で公にされる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
・理由:当年度に計画されていた関西地方での展覧会企画が、会場選定作業が難航した為に次年度へ先送りになったことが最大の原因である。先年度の段階で企画規模と予算の拡大が見込まれていた為、それに充てる為の予備費を他の予算を縮小するかたちで準備していたが、最終的に当初の候補地とは別の会場での開催が次年度に決まり、かなり大きな額の繰越金が生じることになってしまった。 ・使用計画:主に規模を拡大した大阪での展覧会企画とその会期中に同地で開催する予定のシンポジウム企画に充てられる。会場使用料及び展示物の保険・運搬費、そしてシンポジウムや関連企画の際に協力を依頼する外部の専門家への謝礼・交通費などがその主な内訳となる。 また当年度も引き続き、古書市場などを注視しながら資料体の拡充にも努める。収集対象を『会館芸術』の関連誌や(会館で録音された)希少音源等にも広げて精査していくつもりである。
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