最終年度である平成30年度は、平成29年度に開発したカメラルチダ撮影装置による髙精細デジタルカメラを使った撮影によって、様々な撮影方法を実践した。風景の入射角と撮影レンズを通じた人間の目の角度との調整を行い、歴史的オリジナルとしてのカメラルチダにおけるプリズムの効果をカメラのレンズが入る大きさで実現するために、鏡やマジックミラーを使うことによって再現した。最終的に撮影時に撮影者が立つカメラを持った視点としての地面と、撮影対象である前方の光景が同時に撮影出来る装置が完成した。この装置は、美術史上カメラオブスクラに代わる装置として19世紀に多く用いられたように、現代のカメラによる撮影にも応用する事が出来ることが分かった。多重露光することなく、またソフトウエアによってレイヤーを合成すること無く、従来の写真撮影の基本である、一瞬の機会捉えて自身の場所と対象を同時に撮影することは、今日の写真撮影の概念を拡げることとして、重要な意味を持つと思われる。さらに少しづつ改良を重ねて実用化出来るよう調整してきた。 また初年度から開始しているフィルムの超髙精細入力装置からのデジタライズとデジタルカメラからの髙精細入力データでそれぞれにおける世界中の多様なインクジェットカラーペーパーのプロファイル作りを終えて、そのデータを下に、拡張性をもったデジタルプリント可能になり、またカメラルチダを使って撮影した写真を髙精細にプリントして活用できるようになった。現在さらに様々な可能性を求めて研究を続けている。
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