今後の研究の推進方策 |
まず、今回の聞き取り調査の内容を精査する必要がある。例えば、ある修復家は、「革とフェルトによる音色の違いはなく、重要な点は、革は比較的長持ちするが長い間には音質が金属的になる、一方でフェルトは音質は良いがすぐに切れてしまう、という一長一短があることである」と回答している。しかし本人が開発したフェルトについて、他には無い美点があると主張するといった矛盾が見受けられた。今後はこのような矛盾の検証を行うとともに、修復家間の意見の相違をまとめ、視点を新たにした文献調査を行い、研究対象となる楽器の特定と装填するハンマーヘッドの精査を行う。 これまでのところ、パプがフェルトのハンマーヘッドで特許を取得した後、ハンマーヘッドはどのような製法で作られていたのか、革はいつ頃使われなくなったのか、といった事について明らかとなっていない。製法は、製作家の秘密事項であった故、一次資料が著しく欠けている。しかし以下の文献は、この問題について手掛かりを与えてくれるだろう。 「Giacomo Ferdinando Sievers, Il pianoforte, guida pratica per construttori, accordantori, dilettanti e possessori di pianoforti, Napoli 1868.」「Julius Bluhthner, Lehrbuch des Pianofortebaues, Weimar 1872, reprint Bochinsky, 1992.」「“Affect in action : Hammer design in French Romantic pianos“, in: Chopin et son temps : actes des Rencontres internationales harmoniques.」
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