研究課題/領域番号 |
16K02313
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
松島 朝秀 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (60533594)
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研究分担者 |
野角 孝一 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (50611084)
荒井 経 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (60361739)
高林 弘実 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 講師 (70443900)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 絵金 / 芝居絵屏風 / 文化財 / 祭礼 / 土佐 / 部落 / 民俗学 |
研究実績の概要 |
本研究は、「絵金」と呼ばれた絵師(弘瀬洞意)の芝居絵屏風が、土佐の祭礼に享受されてきた根拠を証明し、「芝居絵屏風が民衆に享受された根拠と、祭礼の場で果たす役割を検証する」ことを目的とする。調度品としての絵画が、地方の地域性や民俗性に深く関わってきた例は少なく、絵画と祭礼の関係性が明確に検証できれば、地方の文化的・芸術的特色の理解に新たな進展をもたらすと考える。 平成28年度は、祭礼と芝居絵屏風の悉皆調査を行い活用状況や保存環境の記録を実施した。調査は、研究拠点となる高知大学のある高知県域を中心に、地域の民俗史・美術史を専門とする博物館施設や所属の学芸員と協働で遂行した。他地方の祭礼形式にも留意し、本研究の日本文化における位置づけを常に概観した。具体的に実施した調査研究を下記に示す。 絵金作の芝居絵屏風と祭礼の悉皆調査を行い、祭礼と芝居絵屏風の活用状況を把握するために... ①絵金に関する文献資料調査を、高知県立図書館、高知市立図書館、高知県立歴史民俗資料館、土佐山内家宝物資料館の協力を得て実施した。②祭礼における芝居絵屏風の歴史的変遷を、高知県立歴史民俗資料館、土佐山内家宝物資料館の協力を得て文献調査や聞き取り調査を実施した。③各地域における芝居絵屏風の保存状況を、高知県立美術館と連携して調査した。県内全域に及ぶ聞取りを中心とした悉皆調査を実施。④各地域の祭礼における芝居絵屏風の活用状況を、高知県立美術館と連携し県内全域に及ぶ聞取りを中心とした悉皆調査を実施。以上、4つの事項である。 調査によって、これまで絵金に関し伝承されてきた史実を覆す発見は無かったが、点在する芝居絵屏風の地域マッピングをした結果、絵金の芝居絵屏風は高知県内の被差別部落と言われている地域にも多く伝承していることがわかり、今後は社会的な地域の変遷を含めて調査で得られた結果を体系的にまとめる必要性を痛感した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度に実施した研究及び調査に関して進捗状況を各事項別に記す。 ①絵金に関する文献資料調査を実施した。当初、高知県立図書館、高知市立図書館、高知県立歴史民俗資料館、土佐山内家宝物資料館の協力を得て実施する予定であったが、土佐山内家宝物資料館が閉館したため、研究協力者の協力を得ることが一時困難になり調査予定を大幅に変更した。引き続き次年度でも文献資料調査は継続して行なう予定である。②祭礼における芝居絵屏風の歴史的変遷を調査した。高知県立歴史民俗資料館や赤岡町絵金蔵の協力を得て、歴史的変遷を記した文献資料の調査や聞き取り調査を遂行した。①と②の調査からは、これまで伝承されてきた絵金の史実を覆す発見は無かった。しかし、芝居絵屏風自体の解説に誤りが多々あることが分かったため今後の対応を考えたい。③各地域における芝居絵屏風の保存状況を、高知県立美術館と連携して調査した。県内全域に及ぶ悉皆調査を実施したが、芝居絵屏風は県内に散逸している訳ではなく、東部地域を中心に点在していることがわかった。西部、東部の文化的変遷が影響していると考えている。各地域の民俗文化の相違を比較し、この分布状況を分析する必要性があることが分かった。また、高知県の民間団体が運営しているアクトランド(博物館類似施設)に、大量の絵金資料が保管展示されていることがわかった。次年度以降アクトランドの協力を得られることとなった。④各地域の祭礼における芝居絵屏風の活用状況を、高知県立美術館及び赤岡町絵金蔵と連携し県内全域に及ぶ聞取りを中心とした悉皆調査を実施した。数例の祭礼(夏祭り)に直接参加し、芝居絵屏風を保管管理している地域住人に聞取り調査をした。地域によっては、被差別部落に属する地域もあることがわかった。(*県内の祭礼の開催時期が重なることがあり、全ての祭礼を網羅するのには、本研究の完了年度までかかると思われる)
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今後の研究の推進方策 |
芝居絵屏風を用いた祭礼に地域性を示す特色があることがわかったが、地域によっては被差別部落も含まれることがわかり、今後の調査には社会的問題を含む対応の必要性が生じている。部落問題に関して、研究代表者及び研究分担者は殆ど知識を持たないため、今後は部落問題に詳しい民俗学研究者らの協力を得て調査を進める予定である。 また、一部協力を得ることが不十分だった研究協力者に再度次年度も研究協力を要請することを追加し、引き続き当初の予定通り次年度も調査研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末、研究代表者に国際協力機構から海外への研究者派遣依頼があり、28年度は11月~1月に予定していた研究分担者らとの機材選定の協議が十分にできなかったため購入することができず次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究分担者らとの機材選定の協議を早急に実施し、調査で発生する旅費と合わせて6月中旬までに使用計画をまとめる予定である。
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