研究課題/領域番号 |
16K02313
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
松島 朝秀 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (60533594)
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研究分担者 |
野角 孝一 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (50611084)
荒井 経 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (60361739)
高林 弘実 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 講師 (70443900)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 絵金 / 芝居絵屏風 / 祭礼 / 民俗 |
研究実績の概要 |
本研究は、「絵金」と呼ばれた絵師(弘瀬洞意)の芝居絵屏風が、大衆に受け入れられ土佐の神社祭礼に享受されてきた根拠を証明し、新たな地域の文化理解とさらなる活性化を促すことを目的とする。幕末明治にかけて制作された絵金の芝居絵屏風は、あまりにも猥雑、土俗的で血みどろな作風であるため、日本美術史において異端であるとされてきた。しかし、何故このような絵画が大衆文化を象徴する祭礼に必要であったのか?何故その様な作風となったのか?これまで誰も触れることが無かった疑問に、初めて学際的な視点で挑むものである。芝居絵屏風の絵画的性質を科学調査で検証した結果と、祭礼の様式的性質を民俗学見地から検証した結果を合わせ、絵画が祭礼に取り組まれた原動を新たな視点で解明する。29年度は、芝居絵屏風の色材や支持体の科学調査による分析を行い、用いられている顔料及び染料の特定や制作技法を以下4つの研究によって検証した。 1.「透過X線撮影や高倍率の実体顕微鏡による支持体の構造及び材料の分析」調査資料の移動リスクを低減するため、可搬型の軟X線装置や顕微鏡を用いて安全に調査した。 2.「透過X線撮影における色材使用傾向の分析」上記の結果から、同一画面上での天然顔料と人工顔料、染料の使い分けが確認できるため技法的な検証を行なった。 3.「蛍光X線分析よる色材の成分分析」 4.「高倍率顕微鏡による顔料形状の調査」視覚的な顔料調査が高い精度で実施できるため必要不可欠である。本結果を研究分担者の実作者と検討し、「色材」の検討に科学データのみに依存しない真正性を持たせた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
29年度は、芝居絵屏風の色材や支持体の科学調査による分析を行い、用いられている顔料及び染料の特定や制作技法を検証することを研究計画とし、以下の調査を行なう予定であった。しかし、3.の蛍光X線分析よる色材の成分分析において、調査中に機器の故障が発生し、十分な分析数を達成することが出来なかった。 1.透過X線撮影や高倍率の実体顕微鏡による支持体の構造及び材料の分析 2.透過X線撮影における色材使用傾向の分析 3.蛍光X線分析よる色材の成分分析 4.高倍率顕微鏡による顔料形状の調査
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、芝居絵屏風の特色である彩色感を検証することである。それには、以下の4項目に取り組む方策である。 1.科学調査の結果をふまえ、色材の物性と彩色感の関係性から特色を定義づけられるか?研究分担者、研究協力者と、様々な学術知見から本研究結果と合わせて考察する機会を多く設ける。 2.芝居絵屏風の彩色感は絵金独特のモノなのか?研究分担者と、四国地域の農村舞台にける人形浄瑠璃の人形彩色、漆喰建築における鏝絵等の建築彩色を含めた例と比較し検証する。 3.祭礼と彩色に関連性は存在するのか?研究協力者と神社の歴史的変遷と照らし合わせて検証する機会を多く設ける。 4.土佐民俗文化と絵金との繋がりの検証研究協力者と民俗学的知見から検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査に用いる分析機器の選定に、28年度当初予定していた機器よりも高性能で安価な機種が発売されたため購入した。29年度は、その差額を使用し新たに調査に必要な分析機器の購入を検討していたが、購入検討に時間が掛かってしまい次年度使用額が生じた。
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