研究課題/領域番号 |
16K02315
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
針貝 綾 長崎大学, 教育学部, 准教授 (70342425)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 美術工芸 / 美術工芸教育 / 産業博物館 / マイスター・コース / ユーゲント・シュティル / 手工業 / ドイツ / 近代 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、ニュルンベルクのバイエルン産業博物館に関する基礎的な文献、作品等の調査を行った。その成果を報告した紀要論文では、同館の活動の概要と初期の館長、附属美術工芸マイスター・コースの教員とその教育の概要を整理した。 ドイツではベルリン、ライプツィヒに次いで3番目(1869年)に設立された産業博物館であるバイエルン産業博物館の当初の活動目的は、「産業の発展、とりわけ国の生産品の製造を、形の美しさと技術の完璧さに関して支援すること」であり、同館のコレクションは見本コレクションと手本コレクション、そして科学技術コレクションが柱となっていた。しかし、同館の活動は作品の収集展示、展示作品に関する講演等の啓蒙活動に留まらず、手工業者や美術工芸家の教育にも及んでいる。 クラウス・ペーゼによれば、建築家であった初代館長フォン・クラマーはニュルンベルクでは多くの美術工芸家が過去の様式を堅持していることを批判しつつ、優れた近代美術工芸運動の指導者や先駆者たちの助力を得て、ニュルンベルクの美術工芸家たちが歴史的な様式や伝統的な手法から脱却し、それによってニュルンベルク経済が活性化することを望んだ。 そこで1901年、バイエルン産業博物館に設置されたのが美術工芸マイスター・コースである。同コースには、1901~2年にペーター・ベーレンス、1903~5年にリヒャルト・リーマーシュミート、1907~09年にパウル・ハウシュタイン、1910~13年にフリードリッヒ・アードラーら気鋭の美術工芸家が招聘されたが、そのうち3名はそれ以前にミュンヘン手工芸連合工房の図案家、2名はダルムシュタット芸術家コロニーの招聘芸術家、1名はシュトゥットガルト教育実験工房の教員であったことを筆者は確認した。これにより、ドイツ美術工芸運動の核となるこれらの組織間に人事交流があったことが裏付けられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、以下のような流れで調査研究を進めた。 前期は、それまでに収集した資料の翻訳と資料調査の準備を行った。9月上旬には、ミュンヘンの中央美術史研究所及びニュルンベルクのゲルマン国立博物館図書館においてバイエルン産業博物館に関する基礎的な資料の収集を行い、ゲルマン国立博物館資料室では手本コレクションの閲覧調査を行った。9月後半から10月末にかけて調査資料を整理し、紀要論文を作成した。後期は、資料の翻訳を行った。 これまでの所、調査研究はおおむね計画通りに進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、バイエルン産業博物館附属美術工芸マイスター・コースにおける教育内容、教育理念、教員や受講者の作品、ならびに同館のコレクションとそれらの相互関係について研究を深化させたい。 本年度前期は昨年収集した資料の翻訳や整理を行い、8月にはこれまでの成果を論文にまとめ、学術雑誌に投稿する。9月にはニュルンベルクのゲルマン国立博物館を中心に資料調査を行う。10月には9月の資料調査の成果をまとめ、論文を紀要に投稿する。後期は9月に収集した資料の整理と翻訳を進める。
|