研究課題/領域番号 |
16K02315
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
針貝 綾 長崎大学, 教育学部, 准教授 (70342425)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイエルン産業博物館 / 見本コレクション / 手本コレクション / ニュルンベルク / ドイツ |
研究実績の概要 |
平成29年度前期は,前年に収集したバイエルン産業博物館に関する文献によりまとめた,同博物館と附属マイスターコースについての論文を含む著書を作成し,8月末に出版した。9月にはニュルンベルクのゲルマン博物館附属図書館を中心に,関連資料の収集を行った。その後,これまでに収集した資料の整理,翻訳を行うとともに,特にバイエルン産業博物館の新館計画と見本コレクション(Mustersammlung)及び手本コレクション(Vorbildersammlung)に注目して検討を行い,以下のことが明らかになった。 『バイエルン産業博物館ニュルンベルク新館計画覚書』(1891年)によれば,旧館の2~3倍の広さとなる同博物館新館には,1階に見本コレクションのための工房,2階に見本コレクション展示室,3階に設計室を備えた手本コレクションの展示室と図書室,そして製本室が配置され,旧館が抱えていた問題の解決が図られる予定であった。 バイエルン産業博物館の核を成す見本コレクションは,古今東西の様々な作品を含み,家具部門,金属部門,陶磁器部門等に分けて展示が行われた。一方,手本コレクションは,『1900年バイエルン産業博物館年次報告書』によれば,製本されたものやカルトンの形に整理されたもの,石膏の模型も含まれ,展示だけでなく,貸出も行われた。国立ゲルマン博物館で筆者が調査を行った近代美術工芸の手本コレクションのカルトンは,出版物の切り抜きで構成されており,同コレクションが美術工芸図案のデータベース化を目指して収集され,マイスターコースの受講者や他の産業従事者に閲覧され,様々なモノづくりの手本にされたと推察される。 また,上述の報告書により,バイエルン産業博物館内の設計室では,同博物館の新館に関わる設計やパリ万国博覧会のための準備,そして外部からの設計の依頼を受けていたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度前期は、博士論文にその後の研究成果を加え、論文書籍化の作業を行った。鹿島美術財団から「美術に関する出版助成」を受け、9月末には九州大学出版会から本研究内容を含む著書を出版した。同9月前半には国立ゲルマン博物館附属図書館においてさらにバイエルン産業博物館に関する資料調査を進め、10月以降は資料の整理や翻訳、論文執筆を行った。それにより、産業博物館の新館の構成やコレクションの内容が徐々に明らかになりつつある。本研究課題の調査研究は、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度前期は,引き続きこれまでに収集した資料の整理,翻訳,論文の加筆を行う。9月にはニュルンベルクの国立ゲルマン博物館でさらに資料調査・収集を進め,後期は研究の深化を目指す。また,年内に美学会か大学美術教育学会に論文を投稿する等,研究成果の報告に努める。
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