研究課題/領域番号 |
16K02317
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
楠見 清 首都大学東京, システムデザイン学部, 准教授 (30514004)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 出版 / 公共性 / モニュメント / 地域活性化 / ツーリズム / マンガ / 大衆文化 / パブリックアート |
研究実績の概要 |
前年度のフィールドワークの結果を踏まえ、キャラクター彫像の(1)公共彫刻としての社会的機能、とくに地域活性化と観光資源としての効果について分析、(2)東日本大震災以後のアートとモニュメントの情報メディア化についての考察を行った。ここではマンガのキャラクター表象のモニュメント化を軸に、パブリケーション(出版)とパブリックネス(公共性)を接続し、(a)従来書物によって社会の中で共有されてきた物語やイメージが、書物以外のメディウムによって共有されていく可能性、(b)彫刻やその他の視覚美術などアート作品やアート活動がもたらす社会的効果、(c)情報空間における物語の共有と情報コンテンツのモニュメント的機能などについて比較分析が進められた。(1+a)についてはマンガやアニメのキャラクター銅像、(2+b)については震災復興をテーマにしたアーティストの制作活動やアートプロジェクト、(3+c)については被災状況や防災情報のアーカイブなどが、同時代の動向として共通している。 研究の成果は、首都大学東京メディア創成フォーラム「もにゅキャラ考」(2017年7月、首都大学東京秋葉原サテライトキャンパス)、同「もにゅキャラ考2」(2018年3月11日、国立新美術館・講堂)において発表され、同時に外部の識者やアーティストをゲストにパネルディスカッションを行い、意見交換と情報の発信に努めた。 また、研究のまとめとしてフォーラムの講演録を冊子本に編集し刊行。関係者・関係機関へ配布を行うことで、研究活動の報告と情報の共有をはかり、次年度への研究の足がかりとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集めたデータを元に、複数のテーマから考察を重ねることで、研究の題材のもつ特性や置かれた状況についてより多面的な捉え方をすることができた。とくに年2回のフォーラムを開催し、これまでの研究の成果と途中経過を発表し、外部の研究者やアーティストを招いたパネルディスカッションを行うことで、さまざまな見地からの意見交換を促進し、新たな知見を共有することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究はおもに以下の方法と方向性で行われる。 (1)調査資料のデータベース化とその活用方法の提案、(2)関係者・識者との意見交換と学術的な分析および考察、(3)地域やより広範囲な一般を対象としたヒアリングやアンケートによるシンボルの受容や出版への影響に関する意識調査、(4)周辺領域を接続し包括する視点での位置付けと新たな論点の提起。 (1)(2)(3)はフォーラムやシンポジウム、展示など公開や交流活動を通じてこれまで同様に積み重ねられ、最終的に(4)に集約されていくものと考えている。また、本研究のテーマには現在進行形の事象も含まれるため、最終年度は状況に応じて追加の取材調査も継続しながら、つねに現実に即した諸問題の検討を加え、研究のまとめを行うつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に、研究とフォーラム活動に力を注いだため、当初予定していた取材出張は延期された。 次年度は研究のまとめに際して、必要な取材・発表を組み立て直し、適切に使用するものとする。
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