研究課題/領域番号 |
16K02320
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研究機関 | 愛知県立芸術大学 |
研究代表者 |
太田 公典 愛知県立芸術大学, 美術学部, 教授 (40264709)
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研究分担者 |
佐藤 文子 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (40572152)
梅本 孝征 愛知県立芸術大学, 美術学部, 教授 (50457925)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シンクロトロン光 / 呉須顔料 / 肥前染付磁器 / 中国青花磁器 / 西アジア青色陶器 |
研究実績の概要 |
28年度西アジア陶片(青山学院)、肥前地区を中心とした染め付け陶片(青山学院)29年度西アジア陶片(大原美術館)、肥前陶片(九州陶磁文化館提供)を分析した。コバルト、鉄、マンガンについての分析、ヒ素・鉛についての分析、蛍光X線での青色部分、透明釉部分、素地部分を測定した。 肥前染付磁器17世紀~19世紀にかけての呉須は、その変化を窯ごとにグルーピングすることでまとまりを見ることが出来た。研究協力者の九州陶磁文化館顧問大橋氏により歴史的転換点とコバルト成分の変化について論文発表を予定している。 西アジアの青い色にはコバルトが含まれそのコバルトは、鉄が多くマンガンが少ない分析結果であった。これは中国元時代の呉須と同じ性質となりその関連性をうかがわせる。その他の呉須もコバルトの量により4グループに分類することが可能である。ヒ素、鉛の含有量、特性X線測定を総合的に検討することで西アジアの地域年代の分類への手掛かりとなるであろう。太田を中心にして学会誌に投稿して査読結果を待っている。 西アジアの陶片について28年度青山学院の陶片の中に染付下絵付け風でありながらコバルトが含まれず銅が多く含まれているものがいくつも存在した。青山学院の銅の多い陶片の結果を受けて、大原美術館フーケコレクションから同タイプの下絵付け風のフスタート出土陶片を分析した。やはり同様に絵付けの青にはコバルトがゼロあるいは痕跡程度でありその存在は偶然ではなく一つの技術的同一性が認められる。銅による紺青色顔料は、本研究のコバルトとは別の研究となるが、再現実験ではその可能性が認められる。今後これまでのデータを元に詳細な研究を進めたいと考えている。現時点では詳しいことはわからないが、今後本研究内容を発表していくことで生産地・年代など明らかになると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呉須の研究自体は、順調に進み当初に予測した結果を得ることができている。 概要にも記述したが、西アジアの絵付け陶片にはコバルトを含有しない陶片が存在した。他に数種類の陶片を分析したところ同様の結果を得たことにより、コバルトが使われていないことは間違いないと思われる。 一方測定値が僅かなマイナスを示す陶片が多く存在した。西アジアの陶器は透明釉に青色顔料を混ぜて釉の上に描いていると考えられ、そのため釉薬成分の偏りがおこりマイナスになると思われる。コバルトゼロの陶片とマイナスの陶片は紛らわしいがマイナス陶片においてもコバルトは痕跡程度しか測定できないことから、歴史的な様式分類からは17世紀と思われる一様式の陶片にのみ、コバルトを使わず銅を使う必要があったのかなど、今後の研究課題と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
一つの陶片を、XAFS法によりマンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)でまとめて測定、ヒ素(As)、鉛(Pb)でまとめて各々の原子量の測定をし、蛍光X線(特性X線)でもカリウム(K)から鉛(Pb)までを青色部分、透明釉部分、素地部分と測定した。これらのデータを一つにまとめ他研究者にも公開することを希望している。 また、そのデータを元に様々な比較をすることで呉須の性質とその使われ方、緻密に描かれる場合とおおらかに描く場合に使う呉須が違っていることを科学的に証明し、同様の陶片が複数あることで統計的に産地の性質が理解できることなど多くの情報を得ることが可能であるため、今後も多くの資料の分析を希望している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年最終年度のためデータ分析、報告書製作に使用予定。
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