研究課題
現在一般に市販されている膠と古典的製法によって作られた古典的膠によって、基底材に施す滲み止めである礬水液の使用感の違いがどう表れるかを実験調査した。古典的膠については、北田克己教授による平成26年度基盤研究、「絵画表現における風土と技術-膠を中心とする伝統的材料の持続性に関する調査研究-」内で、大崎商店(姫路市)にご協力いただき、姫路高木地区に伝わる古典膠製造を再現したものを使用した。古典的膠(牛膠・鹿膠)を使用し、古典絵画技法書に記載のある作成法で作った膠水と明礬の混合液である礬水液による塗布実験を行った。古典的膠と現在一般的に市販されている膠の2種類を使用比較する事によって、薬剤の使用によって及ぼされる製品の性状や品質の違い、膠の精度の違いによって塗布した際の使用感が影響するかを比較調査した。基底材の和紙については、美濃紙と宣紙を使用する。各種支持体はロール石州紙により裏打ちを施し、パネルに張り込んだものを使用する。古典絵画の技法書を参考に、膠:明礬:水を8g:5g:450ccの割合で礬水液を作成。刷毛にて和紙に礬水を塗布した後、実験協力者に普段の制作過程を行なってもらい、各工程において使用感の差異があるのかを調査した。墨による表現においては、線描等、普段と変わらず制作が行えたとの感想を得る。胡粉による表現においては、絵の具を盛り上げて彩色した際に、下地の処理がなくてもしっかりと定着し、その後の作業が順調に行えたとの感想があった。たらし込み等の滲みを活かした表現においては、礬水がしっかりと効いているのに不必要に弾く症状が見えずに綺麗な滲みを表現する事が出来た。また紙が水を吸うまでの時間が早く、すぐに絵具が定着する為素早い作業が必要との感想があった。