研究課題/領域番号 |
16K02324
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
渋谷 哲也 東京国際大学, 国際関係学部, 教授 (90438789)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ドイツ映画 / 作家映画 |
研究実績の概要 |
今年度は戦後ドイツの作家映画の傾向を総括するために、これまで科研の課題として継続的に考察してきたストローブ=ユイレの中間的な総括を試みた。まず彼らの特殊な文学脚色の手法についてまとめた論文を執筆し、編著書『ストローブ=ユイレ シネマの絶対に向けて』(森話社)として刊行した。またアテネフランセ文化センターで12-3月に渡って開催されたストローブ=ユイレの全作回顧上映に関わり、様々なトークゲストとして舞台演出家、音楽研究者、イタリア文学者、現在ストローブ映画の製作担当者といった様々な分野の専門家を招いた対談を行い、学際的な視点でのストローブ=ユイレの検証を試みた。 またファスビンダー、シュリンゲンズィーフ、クルーゲなど他のドイツの作家映画の代表的存在を取り上げて、学会発表、上映とレクチャー、研究論文として公表した。まず日本ドイツ学会での6月4日の発表と学会誌『ドイツ研究』への論文寄稿ではファスビンダーとシュリンゲンズィーフの社会のタブーに触れる挑発的な作品の作法を比較考察した。また9月にはアテネ・フランセ文化センターでニュージャーマンシネマの回顧上映を企画し、ジーバーベルク、クルーゲ、ファスビンダーの作品から70年代の代表作を選出して上映し、映画監督、評論家、研究者を招いてのレクチャートークを開催した。 3月には現代ドイツの作家映画として知られてきた「(新)ベルリン派」における最も重要な映画監督の一人アンゲラ・シャーネレクを初めて日本に招き、代表作5本の日本語字幕付き上映と監督レクチャー及びQ&Aを東京のアテネ・フランセ文化センターと京都の出町座にて行った。日本ではほとんど知られない映画作家であるため、今年度はまずは作品自体の紹介と、作家自身の言葉によって映画美学の特徴を知る貴重な機会となった。彼女の映画についての論考を纏めるのは次年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は現代ドイツの作家映画の代表者を日本に招聘し、上映とレクチャーを行うことを主たる目的としてきた。年度の最初にはまだ招待する作家が決定していなかったが、年度の進むうちに、アンゲラ・シャーネレク監督の最新作『はかな(儚)き道』が9月のあいち国際女性映画祭への出品が決定し、シャーネレク監督を日本招聘する可能性が具体的になった。ただし監督の来日が翌3月に延期されたため、上映作を増やし、またイベントを東京と京都の二カ所で行えるように規模を拡大した。現在は3月から4月1日に渡るレクチャー等のイベントを終えたばかりで、その成果を論考として発表するのは2018年度の課題となる。 またその他の映画作家についても口頭発表および論文公表を予定撮り行なうことができた。日本ドイツ学会での発表と学会誌への論文掲載も順調に実現し、また2016年度より準備してきた編著『ストローブ=ユイレ』をようやく刊行できた。当該映画作家について日本語による初めての論集として意義のある出版になったと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、まずは「(新)ベルリン派」のアンゲラ・シャーネレクとトーマス・アルスラン、クリスティアン・ペッツォルトを総括し、21世紀の新しいドイツ映画の傾向を論文化することを中心的な課題としたい。学会発表だけでなく、自主的に映画上映とレクチャーを絡めたイベントを複数開催する予定だが、詳細はまだ決定していない。またニュージャーマンシネマの映画についても引き続き上映とレクチャーの機会を持ち、日本の観客に具体的な作品も紹介しつつ論考を進めていきたい。 これまでも実践してきたニュージャーマンシネマの監督(ファスビンダー、クルーゲ、シュレーター等)については、概略的な論考を纏める準備を行うが、広範囲な作家やテーマを扱うことになるため、論考の執筆と刊行については2019年度以降の課題としたい。
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