研究課題/領域番号 |
16K02331
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研究機関 | 多摩美術大学 |
研究代表者 |
久保田 晃弘 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (70192565)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | データ彫刻 / ライブコーディング / 衛星芸術 / 大地の彫刻 / 成層圏気球 / メディアアート / 即興演奏 |
研究実績の概要 |
2018年8月6日から10月1日まで開催された、札幌国際芸術祭(SIAF 2017)において、ARTSATチームはSIAFラボと共同で《Space-Moere(宇宙モエレ)プロジェクト》と題した展示&パフォーマンスを行った。このプロジェクトは、故イサム・ノグチの手による札幌モエレ沼公園から高度30000mを越える成層圏気球を放出した。 SIAF2017開催前に放球した成層圏気球に搭載されたモジュールには、気球からモエレ沼公園を撮影する広角のハイビジョンカメラに加えて、気球の位置やその周囲の環境を記録するデータロガー「Morikawa」を搭載した。事前の実験は3回行い、そのうち2回は気球の回収に成功した。そのデータをもとに、モエレ沼公園を宇宙を繋ぐデータ彫刻「宇宙彫刻モエレ」を制作し、SIAF2017で展示を行なった。 SIAF2017開催中には、今回のプロジェクトのためにSIAFラボと共同開発した、地上に向けてアルゴリズミックに生成されたプログラムコードを送信する「テレコーティンクモジュール」が搭載された気球を放球する、公開の「テレコーディング・パフォーマンス」を行なった。最初のパフォーマンスは、気球の位置を見失って失敗してしまったが、早朝にもかかわらず、数多くの参加者に恵まれた。SIAF終了後、モジュールを改良して再度パフォーマンスに挑戦し、リハーサルと本番の2回、成層圏とのテレコーディング・パフォーマンスに成功した。 モエレ沼公園というサイト・スペシフィックな作品と、データ彫刻、そしてテレコーディングというメディアスペシフィックな作品のハイブリッドを生み出すことで、まさにこの札幌+宇宙でしか実現し得ない、新たな芸術作品を作り上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
SIAF2017における展示において、実際に成層圏気球を用いた、データ彫刻の制作とテレコーディング・パフォーマンスの実践に成功し、多くの来場者に体験してもらうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回のテレコーディング実験の成果を受けて、汎用テレコーディングモジュールを設計制作することで、本プロジェクトに限らない多様な応用を可能にするための基盤づくりを行いたい。また、今回SIAF2017で行なった展示中に、アンテナをモチーフにした「電磁波の彫刻」というコンセプトが生まれた。そこから物質と非物質が相互に関連するハイブリッドな構造物(彫刻)を検討することができるかもしれない。本研究の根底にあるのは、芸術におけるフロンティアの探索とその拡張であり、モエレ沼公園という他の何ものとも置き換えることのできない唯一無二の場における実践を経て、本研究の強度をさらに高め、深化させていくことを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 来年度は、2017年度に行なった成果を取りまとめつつ、汎用のモジュールを開発に取り組む予定であり、そのための予算を確保するために、一部次年度に繰り越した。 (使用計画) 理由に記載したように、繰り越し額は、来年度の汎用モジュールの開発に利用する予定である。
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