1995年からの私の河原温研究は、とくに河原温のブックアートに集中し、その収集を可能にした。すでに多摩美術大学図書館が所蔵するものに新たな蓄積を加え、『河原温ブックアートコレクション』を創設すべく研究会や講演会を重ねた。 2018年10月-2019年1月、DIC川村記念美術館で、河原温、ジョゼフ・コーネル、瀧口修造、若林奮など10人の美術家たちと書物との関係を展示する『言語と美術──平出隆と美術家たち』展を監修した際、建築家青木淳と共に考案した書架《透明梁》は、河原温の書物概念に共振する作品と考えられたため、2019年、会期終了後に同美術館より譲り受け、河原温コレクションの象徴的な器として活用するよう推進した。 2019年8月、図書館の設計者伊東豊雄に《透明梁》+『河原温ブックアート・コレクション』案を提案して快諾を得、伊東豊雄建築の内部に青木淳設計のユニークな書架を、『言語と美術=河原温コレクション』の象徴として設置できる運びとなった。 同じく8月、ニューヨークの One Million Years Foundation(河原温財団)は以上の流れを評価し、多摩美術大学図書館における『河原温コレクション』の完全化へ向けた協力方針を決定、未収集であったブックアート、とくに稀覯書《CODES》と約300枚のCD版《One Million Years》とを寄贈・寄託された。そこで、2019年12月、『河原温ブックアート・コレクション創設記念展』を多摩美術大学アートテークにて開催した。同時開催のシンポジウムでは、河原温研究の推移と今後の展望をめぐって『「言語と美術」のアーカイヴ化と「空中の本」』と題する講演を行った。また、四半世紀に及ぶ河原温と書物をめぐる思考を「野外をゆく詩学」として書き下ろし、ちくま新書『芸術人類学講義』(鶴岡真弓編)に収め、2020年3月に刊行した。
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