2018年5月、ニューヨークのアメリカン・バレエ・シアターで、ナタリヤ・オシポワ(とデイヴィッド・ホールバーグ)の『ジゼル』を観る。オシポワは一般には『ドン・キホーテ』や『パリの炎』のスーパーテクニシャンとして知られるが、その真骨頂はロマンティック・バレエであり、『ラ・シルフィード』と『ジゼル』は絶品と評される。したがって現代の『ジゼル』について論じる際のキーパーソンである。オシポワのどこか現代的であるかは想像の域を出ないが、初演当時の舞踊スタイルを推測する際にも大いに参考になる。 2018年7月、モスクワのボリショイ劇場にて、ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミーの創立280周年、プティパ生誕200年記念ガラに参加する。これは直接に『ジゼル』とは関係ないが、『ジゼル』を含め、現存するロマンティック・バレエのほとんどはプティパによって大きく改訂され、それが現在でも上演されているので、プティパがロマンティック・バレエにどのような手を加えたのかについて考察する助けとなる。 2018年8月、指揮者の福田一雄氏にインタビューする。福田氏はバレエ指揮者として、またバレエ音楽研究者として、国内における第一人者であり、すでにその著書『バレエの肖像』の中で『ジゼル』も取り上げている。インタビューの際、福田氏が所蔵している資料、および福田氏が作成した資料の提供を受けた。 2018年全般にわたって、早稲田大学大学院文学研究科演劇映像学専修の院生2名に依頼して、研究代表者が所蔵する『ジゼル』関連資料の分類整理、複写、デジタル化をすすめた。 本研究の成果を単行本として出版するため、研究協力者(共同執筆者)との打ち合わせをすすめ、以下の通り、大まかな構成を決定する。 概論、成立の経緯、ゴーチエの舞踊論、アダンの手稿分析、初演時の楽譜分析、音楽編集の変遷、演出振付の変遷、現代におけるさまざまな演出の比較対照
|