研究課題/領域番号 |
16K02337
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
吉田 悦志 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (40210679)
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研究分担者 |
冨沢 成実 明治大学, 政治経済学部, 専任教授 (70339563)
村松 玄太 明治大学, 総務部総務課, 専任職員 (80639568)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大衆芸術 / 大衆文化論 / 人文学 / 昭和歌謡 / 阿久悠 / 大学アーカイヴズ |
研究実績の概要 |
2016年度は、日本のポップカルチャー史上に大きな影響を与えた作詞家・作家阿久悠の未発表日記をはじめとする貴重資料の検討と、関係者へのオーラル・ヒストリー等の整理を通して、阿久の「時代観察」の実態と、その人物像の形成につとめた。具体的な内容は次の通りである。 第1に、日記等に見る阿久悠の創作活動と時代観察の検証を行った。とくに今年度は、従前から進めている日記の解読作業を推進し、晩年にあたる2000年代の日記の精読を行った。この作業を通して、晩年の阿久が病と闘いながら日々のニュースを綿密に日記に書きとどめ、創作の糧としたことを確認するに至った。阿久個人のことにとどまらず、昭和歌謡の研究上でも重要な日記の分析については2017年度も継続する予定である。なお、これらの日記は現段階では一般に公開されていない。そのため、日記の存在とこれまでの成果の一部を内外に周知するための展示を2017年度に実施することを計画している。 第2に、関係者の証言を通して阿久悠の人物像構築に資する作業を行った。今年度は阿久悠の学生時代の思い出を中心として、これまで実施したインタビューの整理作業を実施した。いわゆる「阿久悠以前」の人物像を構築する作業を通して、作詞家として活躍を見せる以前から、阿久が音楽や言葉に対する深い興味を持っていた一端を明らかにすることができた。 第1、第2の作業の成果の一部を活用して『大学史紀要』(明治大学史資料センター)第22号(2017年2月刊行)において特集「阿久悠研究 Ⅲ」を刊行した。2017年度は、阿久の日記の公開に向けたデータベース化作業等を推進する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
阿久悠日記の読解については、一通り読了した。しかしまだ精読が完了していない年度もあるため、より詳細な検討を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、日記の詳細な分析を継続する。日記の記述内容から①阿久が時期ごとにどのようなアイディアを用いて、作品づくりに活かしていたか、②阿久が目に止めた日々のニュースの傾向、③歌謡曲全般に関わる事項を検証する作業を行う。 第2に、日記のデータベース構築に向けた作業を実施する。日記のテキストデータ化及びデジタル化を可能な範囲で行う予定である。 第3に、関係者へのオーラル・ヒストリーを検証する。とくに阿久が作詞家として活躍していた時期に仕事をともにした関係者たちの証言を整理することを通して、阿久の人物像の形成につとめる。 第4に、「昭和歌謡」の検証を行う。「昭和歌謡」には定まった概念が存在しない。国立国会図書館歴史的音源や各種関連資料の活用を通して、「昭和歌謡」の始期や退潮に関する検討を進める。 第5に、現段階での最新の研究成果の一部公表を行う。「大学史紀要」の他、2017年秋を目処に、明治大学内において成果展示等を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第1に、日記のデジタル化、テキストデータ化を実施する予定だったが、検討の結果、日記の読解を優先し、デジタル化、テキストデータ化を抑制したため。 第2に、日記研究にあたっての研究協力者の指導が2016年度は想定より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
阿久悠日記のデジタル化、テキストデータ化を実施するとともに、2017年度秋に成果を一部活用した展示を実施する。
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