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2016 年度 実施状況報告書

アフリカの彫刻家エル・アナツイの見直しと脱欧米中心的な新しい美術論の創出

研究課題

研究課題/領域番号 16K02339
研究機関立教大学

研究代表者

川口 幸也  立教大学, 文学部, 教授 (30370141)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード土地 / 美術 / つながり / 歴史 / 文化 / かたり
研究実績の概要

2016年7月25日から8月11日まで、ナイジェリアのラゴスとンスカ、そしてパリ、ロンドンを訪ねて実地調査を行った。このうち、ラゴス(7月29日-31日)では、ラゴス現代美術センター、ニケ・アートギャラリーをはじめ複数のギャラリーで、西アフリカの同時代美術をめぐるマーケットの概況を調べ、またアナツイおよび他のナイジェリアのアーティストの作品を調査した。次いでンスカでは(7月31日-8月5日)、滞在中毎日アナツイの工房と自宅を訪ね、作品制作の様子を写真、ビデオ等で記録するとともに、アナツイ本人や、工房で実際に作品制作の作業を行う若手の助手たちにインタビューを行った。このほかパリでは(7月26日-28日)、ルーヴル美術館とケ・ブランリー美術館で、かつてプリミティヴ・アートと呼ばれたアジア、アフリカ、オセアニアなど非西洋の造形が、どのような文脈で展示されているかを調査した。ロンドンでは(8月6日-9日)、テート・モダーン(近代美術館)、大英博物館をはじめ、エル・アナツイの作品を収蔵している博物館、美術館、そして彼の作品を扱っている民間ギャラリー(オクトーバー・ギャラリー)を訪ね、実際にどんな文脈で展示されているかを確認した。
さらに、2017年3月10日から同19日まで、インドネシアのジャカルタとバリで博物館、美術館の活動状況と同時代美術をめぐるマーケットの実態を調査した。インドネシアで特に注目したのはバリ島美術やバリ島絵画などと称されている一群の造形である。これらは20世紀に現地在住のたった二、三人のドイツ人やオランダ人の画家の指導によって生まれたもので、今では街なかのいたるところで売られている。また、現地の美術館、博物館だけでなく、日本の福岡市アジア美術館などでも収蔵展示されている。同じ非西洋圏の、やはり植民地であった地域の新しい造形としてアフリカの同時代美術と比較検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

エル・アナツイの作品に対する評価はいまや世界的に見てきわめて高いが、その作品が生み出される背景についてはこれまで必ずしも知られてこなかった。今回、アナツイの生活と作品制作のベースであるナイジェリアのンスカに留まって、本人にインタビューを重ねたほか、彼の生活の様子や作品制作のプロセスを細部にまでわたって実地に見る機会を得て、それらを写真とビデオにより記録に収めることができた。こうした記録は、エル・アナツイと彼の作品世界を、従来の西欧を中心としたアートワールドの枠内ではなく、アフリカという非西洋の土地に根差した文脈において捉えなおしていくという、本研究の主たる目標を達成していくうえで重要な手がかりとなるだろう。その意味で研究はほぼ予想通り順調に進展しているということができる。
また、インドネシアで、アフリカ以外の非西洋の同時代美術の状況を知ったことにより、エル・アナツイを包み込むアフリカの文化が置かれている状況を比較して検討することができ、研究にいっそうの幅と奥行きがもたらされた。

今後の研究の推進方策

基本的には2年目以降も、初年度の手法に基づいて着実に研究を実施していく予定である。つまり、まず(1)アナツイの本拠地であるナイジェリアのンスカを訪ねて、土地の歴史、文化、風土と彼の制作活動の関係に注目しながら、調査を深めていく。そのために、2年度目の今年は、彼の周辺にいる人びと、とくに実際の作業を行っている若手の助手たちの生活ぶりや考えかたにも注意を払っていきたい。次に(2)ここ2、3年だけを見ても、アナツイの作品は、ヨーロッパ、アメリカ、日本などで次々に美術館、博物館に収蔵されているが、それらがコレクションとしてどのように位置づけられているかを押さえておく必要がある。そして(3)アフリカと比較の対象となりうるような地域の同時代美術の状況にもできれば目配りをする。以上のような点に着目して、今後の研究を進めていきたい。

次年度使用額が生じた理由

インドネシアでの研究調査の実施が、入試対応などいくつかの学内事情から年度末の3月半ばすぎとなってしまい(実施期間:2017年3月10日―19日)、そのため現地での支払いを含めた経費の精算が年度中に間に合わず、次年度への繰り越し精算になってしまった。したがって、この分を差し引けば、実際の次年度使用額はもっと少なくなるはずである。

次年度使用額の使用計画

夏に行う予定のアフリカ、ナイジェリアでの現地調査等で使用する予定。また必要な物品については順次購入する予定。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 美術館という儀礼の場―キャロル・ダンカン氏の研究から2017

    • 著者名/発表者名
      川口幸也
    • 雑誌名

      MOUSEION(立教大学博物館研究)

      巻: 62 ページ: 17-18

  • [図書] 『ビーズ―つなぐ かざる みせる』2017

    • 著者名/発表者名
      池谷和信、川口幸也、竹沢尚一郎ほか
    • 総ページ数
      136(125)
    • 出版者
      国立民族学博物館

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公開日: 2018-01-16  

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