研究課題/領域番号 |
16K02346
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
鈴木 雅恵 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (70268291)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 新作能 / 新作組踊 / シェイクスピア / オセロ / 翻訳 / アジア / 沖縄 / 翻案 |
研究実績の概要 |
本研究は、新作能や琉球歌劇、組踊など、シェイクスピアという西洋の古典との融合を主たる研究対象としている。また、それにともなう「翻訳」(古典語から現代語への翻訳、琉球語から共通日本語への翻訳、日本語から英語への翻訳、台本から舞台への翻訳、文化の翻訳、舞台での字幕翻訳、編集された映像記録への字幕翻訳など)の問題も、重要な研究対象となっている。 本年度は、英国の旅劇団による「テンペスト」の公演に伴う記録映像や英語字幕の編集、泉紀子氏が詞章を作成した「新作能オセロ」の大江能楽堂での上演企画に伴う研究、その英訳、および、大城立裕氏作の琉球歌劇との比較研究に多くの時間を費やした。4月には「新作能マクベス」について、日本比較文学会関西支部研究例会において報告し、8月にはストラットフォード・アポン・エイボンおよびロンドンで開かれた、国際シェイクスピア学会に参加して研究発表をおこない、研究内容の途中成果を発信するとともに、国際的な研究者との交流によって見識を広げることができた。 また、12月には日本演劇学会秋の研究集会の実行委員として、本務校でシェイクスピア没後400年を記念した集会を開き、シェイクスピア翻訳家の松岡和子氏、中国演劇研究家で、「中国のシェイクスピア」の作者の瀬戸宏氏、The Taming of the Shrew を漢劇(Hanju)「『馴悍記』として、翻案・演出した中国のシェイクスピア研究者熊傑平氏らから、多くの見識を得ることができた。また、母校の東京女子大のシェイクスピア研究会のルーツを調べ、同志社女子大、甲南女子大、明治大学の教員/研究者とともに「シェイクスピアと日本の高等教育」という二か国語パネルを開き、今後のより大きな課題への取り掛かりを得ることができた。「新作能研究会」も無事立ち上がり、「新作能」の定義や、「新作組踊」との関わりを研究する土台ができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」でも報告した通り、本年度は、日本演劇学会、国際シェイクスピア学会、日本比較文学会など、内外の学会・研究会での発表、実演家や報告、研究者へのインタビュー、2か国語によるジョイント・パネルでの討議、シェイクスピア没後400年記念の演劇集会や上演など、多くの企画をこなし、研究すべき題材の調査と収集は順調に進んでいる。また、今後は「新作能研究会」の活動に参加しながら『新作能オセロ』についての論考や、松岡和子氏へのインタビュー原稿をまとめ、前プロジェクトともリンクさせたいと考えている。しかし、大学での上演を含むシェイクスピア原語上演と、アジアの古典芸能のシェイクスピア移入という、二方向の"High Culture" との接点の模索という新たな課題が生じ、それにともなう、「翻訳」の作業、現地調査、インタビュー、記録した音声や映像の編集の作業に、やや遅れが生じた。今後は、予想以上に手間のかかるそうした作業や、論考のまとめのための時間を今後どう捻出するかも、大きな課題である。次年度は、どのように計画的に研究や作業を進められるかを、なるべく細かい計画を立てながら考えていきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
1.琉球歌劇や新作組踊に関する英語論文の完成(2017年に第一稿完成予定。2018年に修正作業を行う)2.その論考の出版(できれば、英語版と日本語版) 3.「新作能オセロ」の論考の完成(上田先生の「能オセロ」や、ク・ナウカの「夢幻能なオセロ」との比較および日本の「オセロ」受容史を含む) 4.松岡和子先生との「オセロ」についての対談のまとめ (翻訳の問題、新古典舞台としての蜷川シェイクスピア、能とシェイクスピアの共通点など) 5. 「新作能オセロ」の詞章・論考の英訳と海外での発表(海外公演の可能性も模索) 6.野田秀樹のシェイクスピアの翻案作品への日本の芸能の影響を分析する。 7.東京女子大のシェイクスピア研究会の過去の資料をまとめ、「日本の高等教育とシェイクスピア」の論考の中でまとめる工夫をする。本テーマに収めきれない場合は、次のプロジェクトに持ち越す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
翻訳・資料整理の作業の遅延のため
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度の取り寄せが間に合わなかった書籍の購入や、テープからの原稿おこしの補助などの人件費に充てる
|