研究課題/領域番号 |
16K02351
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
田中 順子 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (70299262)
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研究分担者 |
沼田 里衣 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任准教授(テニュアトラック) (10585350)
三宅 博子 明治学院大学, 文学部, 研究員 (40599437)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 音楽活動 / 精神障害 / アーティスト / 地域 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)アーティスト共働型音楽活動の導入により、より先駆的な音楽表現方法論を構築する、2)本音楽グループの意義を、障害の意味変容、表現との関係性、地域変容等から明らかにする、3)人の多様性を受容する社会のあり方について問題提起するために、成果を書籍化して出版する、の3点であった。 1)に関しては、毎月定期的に精神的な問題を有する人を対象に、アーティスト、地域住民と共働して音楽活動を実施することができた。ソングライティングや即興演奏、偶然性の音楽等々、演奏技術の不要な多種多様な音楽表現を、アーティスト主導のもとに展開することができた。表現方法はなおも発展中であり、より充実した方法論の構築に向け、平成30年度も継続して実施する予定である。 2)に関しては、多様な音楽表現を通して音楽の固定観念をはずし、音を媒介として他者と共鳴することができた等、活動の意義は参加者の感想からも証明された。毎回の活動記録により、音楽自体への興味の向上だけでなく、音楽表現に次第に拡がりが出てきたことも確認できた。固定メンバーも出現し、個人的変容レベルでは、研究者のみならず参加者自身も、本グループの存在意義を認めていることが明らかとなった。地域住民の参加も常に一定数あり、精神的な問題を有する人に対する関心が示されている。しかし、精神障害に対する理解や活動による地域変容には至っておらず、平成30年度も継続して取り組む課題である。 3)に関しては、まだデータを収集中であるため、平成30年度以降に見送る予定である。 その他の研究活動では、研究実施計画に挙げた「芝の家・音あそび実験室」の実地調査、第15回世界音楽療法学会への参加、論文作成、国際学会への演題提出を行い、研究計画をほぼ達成できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた音楽活動の実施場所が先方の都合で使用できなくなり、音楽活動を定期的にコミュニティーで実施するための場所の確保に時間を要した。そのため、音楽活動の開始が予定よりも遅れたことが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
安定的に使用可能な活動場所の確保はできたため、引き続き定期的な音楽活動の実施を継続する。現在の課題として対象者数が少ないことが挙げられる。そのため、自治体や地域団体にチラシを配布したり説明に出向く等を行い、対象者の確保に努める予定である。また、方法論の検討を研究分担者、研究協力者等と開始し、書籍の出版に向けての準備を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、活動場所の確保に時間を要し、音楽活動の開始が約5か月遅れたことである。そのため、支出予算の多くを占める研究協力者(ミュージシャン)の旅費と謝金が、予算よりも減じる結果となった。また、北海道の「べてるの家」への実地調査を、対象等の違い等から取りやめたことも、旅費が消費されなかった理由である。 次年度は月に1回の定期的活動が実施できる見込みが立っており、旅費と謝金は引き続き使用する予定である。また、社会モデルによるコミュニティーでの音楽活動を実践している作業療法士がイギリスにいることが分かったため、実地調査に行くことを予定している。
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