研究課題
基盤研究(C)
日本初代の作曲家として活躍した山田耕筰のベルリン時代(1910-13)は、美術との関わりから見ても、前衛的な作品への理解が開かれたという意味で、大きな意義のある時代だったといえる。この経験がなければ、帰国後、恩地孝四郎や長谷川潔、東郷青児らとの交流も生まれなかったかもしれない。そして、こうした視覚的芸術への関心の根底では、山田が日本で独自のオペラを創作し、総合的な舞台芸術の創出を夢見ていたことを、今一度、想起すべきだろう。
芸術学
山田耕筰と美術に関する研究を遂行するうち、その出発点としてベルリン留学時代が最も大きな影響を与えた時間だったと考えるにいたり、その考察を深めた。この調査研究の成果は、2020年1月から3月にかけて栃木県立美術館で開催した企画展「山田耕筰と美術」とその際に刊行した同展の図録において公表した。日本近代美術史を他領域との関わりから改めて捉え直す試みは一定の成果を上げたと考えている。