研究課題/領域番号 |
16K02362
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝庸 新潟大学, 人文社会・教育科学系, フェロー (90143742)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 平家物語 / 平曲 / 平家琵琶 / 譜本 / 平家正節 / 波多野流 / 當道 / 當道資料 |
研究実績の概要 |
本研究は、「平曲譜本」「平家物語」および「當道資料」を対象とする。 「當道資料」に関しては、第1に、以前調査したことのある江島杉山神社(旧一つ目弁天社)蔵『當道大記録』一冊の再調査および撮影を行った。第2に、荻野検校の御子孫・尾﨑家に伝わる『平家勘文録』『當道要抄』に関する調査も行った。 「平曲譜本」に関しては、第1に、國立臺灣大學圖書館特藏組蔵平曲譜本に関する調査・研究を行い、波多野流譜本を解説・翻字付き影印を刊行すべく継続的な作業を行った。翻字はすでに終了しているが、解説原稿は今年度終了した。「臺灣大學典藏 全文刊本」「國立臺灣大學圖書館典藏 平家物語 音譜本」『第一巻 平家物語 節附語り本』として刊行される予定である。なお、臺灣大學には、『平家物語』の古活字本と写本が所蔵されている。これらについても、今後検討を続けたいと考えている。第2に、尾﨑家に伝わる『平家正節』(完本)に付随する資料(『平家正節附録』『平家正節 十之下』『灌頂卷』など)の調査を行った。 平家物語を平曲によって物語順に全巻全句を語る「一部平家をめざして」は、19回行い、卷第一「鵜川合戦」から始めて、卷第四「南都牒状」まで進んだ。開始当初の予想よりも早い進み方と言ってよいだろう。なお、この会で使用する譜本は尾﨑家本『平家正節』だが、必ず東京大学青洲文庫本『平家正節』と全文・全墨譜を照合し、なお不明箇所は、昭和女子大学蔵『平家物語』(譜本)および早稲田大学演劇博物館蔵『平家物語』(譜本。豊川本)および館山甲午所蔵本を参照することにしている。 甲南女子大学所蔵『平家物語』の翻字は、卷第十一「壇浦合戦」から始めて、「腰越申状」までの10章段を終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「當道資料」に関しては、『當道資料集成』刊行を目標として見た時、やや遅れていたのだが、江島杉山神社蔵『當道大記録』を得たことで、出版原稿提出に大きく進むことになる。 「平曲譜本」は、國立臺灣大學圖書館典藏 平家物語 音譜本のうちの波多野流譜本の刊行が目標だが、今年度「解説」原稿が完成したことは評価できる。 「一部平家をめざして」は、当初予想をかなり上回り進んでいる。これは、会場として使用を許されている神奈川県立横浜翠嵐高等学校の協力によることも大きい。 甲南女子大学本の翻字は、順調な進み具合である。 以上、おおむね順調と言ってよいと思う。
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今後の研究の推進方策 |
「當道資料」関係は、『當道資料集成』のための原稿整備にとりかかっている。一番問題だったのが『當道大記録』で、これも善本を得たことで前進できると考えられる。 「平曲譜本」関係は、臺灣大學蔵平曲譜本に関する研究を中心に進んでいるが、第一巻として予定の波多野流譜本が刊行されれば、第二巻は平家正節である。これらに関する調査・原稿準備を通じて、国内の同類本の整理を行いたいと考えている。そして、『平家正節』の諸本の整理には、「一部平家をめざして」で使用する譜本の基礎点検も大いに役立つものと考えられる。 要するに、現在の諸検討を続けていくことで、おのずからまとまってくるであろうと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、文字資料を主に対象とする一方、「一部平家をめざして」のように演誦の場をたびたび設定している。文字資料は、すでに所在が明らかな図書を対象にする一方、古書市場に出る関連資料にも対応したいと考えている。「一部平家をめざして」は、単年度内での演誦回数が予想よりも増えている。 以上にことを踏まえて、次年度の活動(資料収集、演誦)をやや支援する形にしておきたいと考えたのである。
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次年度使用額の使用計画 |
おそらく「一部平家をめざして」のための資金として使用するのが主で、場合によっては、資料収集のために使用する予定である。
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