研究課題/領域番号 |
16K02368
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田中 尚子 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (50551016)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 注釈 / 儒学者 / 室町 / 江戸 / 愛媛・伊予 |
研究実績の概要 |
初年度は基礎固めの年と位置付けていた。その意味では、資料の閲覧、収集、整理が中心となるのはやむを得ぬところであり、研究成果をすぐに出すのは難しいであろうことを予測した上での1年であった。 とはいえ、科研の申請時以前より取り組んできたものとして、2016年7月には「『碧山日録』に見る太極の三史への取り組み―長禄・寛正期における学問の一様相―」(日本文学65-7)、「二十一史通読に見る林鵞峰の学問姿勢―『国史館日録』・『南塾乗』との関わりから―」(近世文藝104)を発表し、室町・江戸の学者の学問事情の一端を示し得た。 夏には東京大学資料編纂所や国立公文書館へ赴き、伊予・林家関連の資料を閲覧し、また学内でも伊予関係の資料を収集、整理した。その成果の一部は、平成28年度 愛媛大学法文学部人文学講座研究推進経費事業成果報告書「愛媛の文学芸能に関する文化誌研究―地域の言語文化資源の位相と展開―」に「等妙寺・歯長寺の本末関係と縁起―「等妙寺縁起」・「歯長寺縁起」における相互補完の可能性―」として発表した(2017年3月)。 それに遡って11月には、室町期の学問事情の解明の一環として、学内の資料学研究会にて発表の機会をもらい、「日本における『史記』の受容―室町期の学問の一様相として―」との題目で発表し、また年度末には同タイトルにて原稿化した(資料学の方法を探る16号)。ここでは、室町期の学者の漢籍受容についての考察を行った次第である。あわせて、2月には別の学内の研究会にて、「『中華若木詩抄』が捉えた富士山・東国―中世日本紀との接点」という発表も行った。こちらでは漢籍の注釈が当時の日本の有り様を示すものとして機能することを指摘した。 これらの成果を含め、自身のこれまでの研究成果を著書としてまとめるべく、本年度後半は主にその仕事に取り組んだ。2017年度内の刊行に向けて現在作業を継続中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は論文刊行というところまではなかなか難しく、まずは基礎固めとして資料の閲覧・収集を中心に取り組む予定であった。とはいえ、学内の共同プロジェクトとも重ね合わせる形で、等妙字・歯長寺といった伊予の縁起に関する研究、そして室町期の学者たちの学問事情として『中華若木詩抄』における風景・地理認識などの問題について、報告書の形でまとめることもできた。それは著書の原稿にも収める予定であり、次年度にはより確実な形で成果として呈示することができると考えている。 室町から江戸への学問事情をテーマとした著書の刊行に向けても、今年度で大きく話を進めることができた。 そういった意味では、おおむね順調に進展していると言えると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目となる今年度の最大の課題は著書の刊行となる。現在はそれに向けて鋭意作業中である。 さらなる課題としては、より本格的に伊予の地の学問事情について、これまで閲覧した資料をベースにして、論文化していくつもりである。また機会があれば、それを地元の方にも還元すべく、発表の機会なども持てればと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
著書刊行に向けて作業をしてもらうべく、3月分の人件費として残しておいたが、その部分で予定通りの執行がかなわなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
3月に依頼しようとした仕事は4月に先送りして働いてもらうことになったため、残額分は4月内での勤務を依頼し、5月には残額分は消費できる予定である。
|