研究課題/領域番号 |
16K02371
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
稲田 秀雄 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (80264969)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 狂言 / 鷺流 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、研究実施計画に基づき、山口鷺流の元祖・春日庄作の自筆台本のうち、今まで未検討であった『第壹号□部 狂言初番 大名事』の最後に収める「靱猿」、及び『以呂波』に収める「以呂波」について、1曲ごとに、大蔵流・和泉流のような他流台本、さらに鷺仁右衛門派台本、鷺伝右衛門派台本と比較することによって、その系統的位置付けを分析・考察した。その結果、この2曲は、詞章・演出ともにおおむね鷺伝右衛門派の特色が認められるが、「靱猿」に関しては、冒頭の大名のセリフに、鷺仁右衛門派台本に近い部分があること、また、その曲中で謡われる猿歌の細部において、大蔵八右衛門派の虎光本に近い箇所が見出された。これらは、中央(江戸)の鷺流から山口鷺流への伝承状況、長州藩鷺流に源流をもつ山口鷺流の独自性を考える上で、重要な指標となるものである。以上の分析結果は、論文「山口鷺流台本の系統(六)―春日庄作自筆本をめぐって―」(『山口県立大学国際文化学紀要』24号、2018年2月)としてまとめ、発表した。 なお、29年度に行った本研究課題における鷺流諸台本の分析結果は、論文「狂言に見る祇園会風流―「鬮罪人」を中心に―」(『藝能史研究』218号、2017年7月)にも生かされたことを付言する。 以上の成果により、平成28年度の研究実績に引き続いて、山口鷺流の狂言演目は、基本的に鷺伝右衛門派の系統に属すること、しかし、部分的には(特に中央の)鷺伝右衛門派とは異なる詞章をもつ場合があることを具体的に指摘することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
春日庄作自筆本の系統的分析については、当初の計画にあった未検討曲のうち、2曲の分析を終え、研究論文(大学紀要への投稿)にまとめることができた。残る1曲についての予備調査もほぼ終えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、研究実施計画に則り、春日庄作自筆本の残りの1曲の系統的分析を終えることで、山口鷺流の最も基本的な台本である春日庄作自筆本の分析を完了したい。また、山口市に伝わる本狂言以外の間狂言台本について、翻刻の作業を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 平成29年度において、数度の資料収集・調査を予定していたが、大学業務の関係で1回のみの調査しか実施することができなかった。 (使用計画) 平成30年度は、前年度にできなかった資料収集・調査をさらに実施し、最終年度の研究実施に必要な物品を調えたい。「次年度使用額」をそうした旅費・物品費に当てる予定である。
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