本研究は、申請者がこれまでに行ってきた、中古から中世にかけての物語作品における本文・古注釈書・受容に関する研究のうち、『源氏物語』周辺文化の形成に大きく重点を置く。具体的には、(1)『源氏物語』本文と古注釈に関する研究、(2)近世における『源氏物語』俗語訳に関する研究、(3)『源氏物語』周辺作品に関する研究という3項目を柱とする。 このうち(1)については、戦国期の女性古典学者である花屋玉栄関連の『源氏物語』古注釈書を、数人の研究者と協力の上、翻刻・出版する予定で、すでに一通りの翻刻を終え、翻刻確認と解題執筆を行っている最中である。 (2)の『源氏物語』俗語訳については、8月にブラジルのカンピーナス大学で開催された第12回ブラジル日本研究国際学会・第25回全伯日本語・日本文学・日本文化学会において、近世の俗語訳『源氏物語』である『紫文蜑之囀』の挿絵と本文の関係について考察し、挿絵の特徴とともに、挿絵を描いた絵師について推定した。 また、同じく近世の俗語訳『源氏物語』である梅翁『源氏物語』および『風流源氏物語』の翻刻、注釈も終え、複数の近世『源氏物語』についての論文とともに近日、出版される予定である。 (3)については、2017年度に行った中世文学会春季大会・シンポジウム「散文の中の和歌」のパネリストとして「中世王朝物語と和歌」と題した発表の一部を論文化し、「作り物語の和歌的表現―中世王朝物語を中心に―」との題で『中世文学』第六十三号に掲載された。また、同発表の一部である『我が身にたどる姫君』の成立時期についても論文化を終え、「『我が身にたどる姫君』の成立時期」として『国文学研究』第188集に掲載予定で、現在、校正段階にある。
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