研究課題/領域番号 |
16K02376
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
河野 貴美子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20386569)
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研究分担者 |
新川 登亀男 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50094066)
陣野 英則 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40339627)
高松 寿夫 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40287933)
吉原 浩人 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80230796)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 「文」の概念史 / 国際研究者交流 / 東アジア学術文化史 / 和漢古文献 / 古注釈書 / 日中近代図書館 / 図書分類法 |
研究実績の概要 |
本研究は、1.日本の学術文化史を「文」の概念によって捉え直し、東アジアとのつながりの中で「文」の意義と可能性を改めて追究することを目的とし、その研究を立体的に構築していくため、2.日本の学知を支えてきた和漢の典籍と古注釈書を通して前近代の学問の実相を辿り、3.近代初期の日中の図書館の蔵書形成と目録分類の変遷を調査分析することを合わせて進めている。これらの研究活動は前年度に続き、早稲田大学プロジェクト研究所「日本古典籍研究所」が統括し行っている。 1.については、研究協力者(海外共同研究者)であるボストン大学Wiebke DENECKE准教授と緊密な連携のもと共同研究を行い、その成果として『日本「文」学史 A New History of Japanese "Letterature" 第二冊 「文」と人びと――継承と断絶』(河野貴美子・Wiebke DENECKE、新川登亀男・陣野英則・谷口眞子・宗像和重編、勉誠出版)を2017年6月に刊行した。本書は、古代から近代初頭の日本「文」学史を人びとと「文」との関わりから描き出すもので、総勢28名の執筆者の協力を得た成果である。また『日本「文」学史 第三冊 「文」から「文学」へ――東アジアの文学を見直す』(河野・DENECKE・新川・陣野編、同)の刊行準備を進め、2017年7月22、23日に早稲田大学において、国内外の執筆者35名が草稿を持ち寄り刊行に向けた討論を行うワークショップを開催した。 2.については、前年度に続き、清原宣賢の抄物や具平親王の『弘決外典鈔』身延文庫蔵写本の研究と翻刻を進めた。また、古代から中世に至る日本の学術文化史に関する学会発表や論文執筆を行い、成果を発表した。 3.についても、前年度に続き、北京大学図書館および中国科学院国家科学図書館所蔵資料の調査、考察を行い、資料のデジタルデータ化を引き続き進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.日本の学術文化史を「文」の概念から捉え直す研究については、『日本「文」学史 A New History of Japanese "Letterature" 第二冊 「文」と人びと――継承と断絶』を刊行することができた。また『日本「文」学史 第三冊 「文」から「文学」へ――東アジアの文学を見直す』の刊行準備を進め、国内外から多数の執筆者の協力を得て、編集作業を進行している。本書は、東アジアにかつて共有されていた「文」の概念の変容と、現在の文学世界への転換を、日本・中国・韓国を軸に東アジア全体の問題として検討する試みであるが、編集のためのワークショップ等を通じて、執筆者をはじめとする参加者と問題意識を共有し、議論を深めることができた。なお、ワークショップを機縁として、『熱風学術網刊』7(上海大学中国当代文化研究中心、2017年12月)に「"日本‘文’学史 A New History of Japanese Letterature" 与“域外漢学”」(Wiebke DENECKE、河野貴美子(孫世偉訳))と題して本プロジェクトの紹介文の執筆機会を与えられたことは、本研究課題の取り組みが海外の学界にもインパクトをもたらした成果の一といえる。 2.和漢の典籍と古注釈書の研究については、清原宣賢の抄物や具平親王の『弘決外典鈔』の翻刻と研究を進めた。また、研究協力者(海外共同研究者)である北京大学劉玉才教授との連携により、2018年度に「日中古典学の交流と流通」と題する日中古典学ワークショップを開催し、中国学研究者と日本学研究者が共同して和漢の典籍の伝播やその意義について議論する機会を設けるべく準備を進めている。 3.近代初期の日中の図書館の研究については、北京大学図書館及び中国科学院国家科学図書館それぞれの協力を得て、近代初期の図書館関連資料の調査とデジタルデータ化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.日本の学術文化史を「文」の概念から捉え直す研究については、『日本「文」学史 第三冊 「文」から「文学」へ――東アジアの文学を見直す』の完成、刊行を目指して編集作業を進めていく。 2.和漢の典籍と古注釈書の研究については、引き続き清原宣賢の抄物や具平親王の『弘決外典鈔』の翻刻と研究を進める。また、北京大学中文系と共同して、2018年10月27日に日中古典学ワークショップ「日中古典学の交流と流通」を早稲田大学を会場として行う予定である。 3.近代初期の日中の図書館の研究については、引き続き北京大学図書館及び中国科学院国家科学図書館において近代初期の図書館関連資料の調査を継続し、デジタルデータ化を進めると同時に、調査、考察の結果を論文として公刊を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 2017年7月22、23日に開催した「日本「文」学史 第3回ワークショップ」は、『日本「文」学史 第三冊 「文」から「文学」へ――東アジアの文学を見直す』の執筆者が国内外から35名集い行ったものであり、その招聘旅費や通訳、翻訳などに多くの経費が必要であろうと見込まれたため、2016年度の研究費の一部を残し、2017年度に使用することとした。幸いワークショップは予算を超過することなく終了したが、今後の書籍刊行に向けて打合せや翻訳費用などの支出が継続して見込まれるため、2017年度の研究費の一部を2018年度に使用する計画とした。 (使用計画) 『日本「文」学史 第三冊 「文」から「文学」へ――東アジアの文学を見直す』刊行のための打合せ、翻訳費用のほか、2018年10月27日に開催を予定している日中古典学ワークショップの会合費、人件費・謝金、また、和漢の典籍と古注釈書の研究、及び近代初期の日中の図書館の研究に関する図書資料費、出張旅費を中心に使用する計画である。
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