本研究は、研究代表者がこれまで実施してきた日本国内の板木に対する研究の視野を、東アジアに拡大することにより、東アジア比較板木研究体制の構築を目指すものである。2018年度の実績は以下のとおりである。 1. 韓国で開催されたThe 2018 International Association for Printing Woodblocks (IAPW) Symposium: Cultural History of Printing Woodblocks in Asia - Identification and Comparisonに参加し、日本の法帖の板木(凸版・凹版・正面版)を研究素材として、複写技術として活用されていく木版技術に着目した口頭発表をおこなった(2018年10月)。またこの参加を通じて、各国の木版研究者と交流を進めた。 2. 韓国古版画博物館が所蔵する日本の板木の調査を実施した(3月)。163点の板木(ただし、銅版等を含む)を調査し、1505カットのデジタル画像によるデジタルアーカイブ構築をおこなった。日本国内では、本山佛光寺(京都市)が所蔵する板木の調査を進め、ナンバリング等の作業を進捗させた。この他、木版が「本の印刷」という認識を超える用途を持った事実を示せるよう、当該予算により扇面等の板木収集も実施した。 3. 構築したデジタルアーカイブおよび公開中のARC板木ポータルデータベースの今後の展開を検討するため、Reflectance Transformation Imaging (RTI)による画像統合について試験をおこなった。 4. 上記の活動を踏まえ、口頭発表3件、論文3件の成果発表をおこなった。
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