中世の貴族・寺院社会において説話は独立して存在した訳ではなく、日記・儀式書・聞書・言談の中に生成するものであった。本研究は、貴族・寺院社会における資料群の中で、説話の生成・変遷・保管がどのように行われたのか、体系的かつ実証的に考察しようとするものである。①勧修寺・東寺などひとつの体系性を保った資料群(文庫)の全体構造を把握し、そのなかでの説話がおかれた位置(位相)を提示し、②具体的な説話を挙げて、その生成過程を社会との関係において考察し、③それぞれにおいて明らかになった実証実例を体系化・論理化することで、説話の生成過程を考えるというものであり、研究の進展に大きな意義を持つものであった。
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