研究課題/領域番号 |
16K02389
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研究機関 | 就実大学 |
研究代表者 |
川崎 剛志 就実大学, 人文科学部, 教授 (70281524)
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研究分担者 |
仁木 夏実 明石工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40367925)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 役行者 / 顕密寺院 / 箕面寺 / 縁起 / 灌頂 |
研究実績の概要 |
中世における役行者伝の正統化という汎宗派的現象を、顕密寺院の活動に照らして解明、評価するという目的を達成すべく研究を進め、3年計画の2年目をおえた。2年目の計画の中心は、1年目に行った『箕面寺縁起』の基礎研究の成果を踏まえて、修験道の歴史と文化に関する国際研究集会を開催することであった。2017年6月19-20日、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校主催、本科研の共催というかたちで、同大学で国際研究集会「Repositioning Shugendo -New Research Direction on Japanese Mountain Religions-」(修験道の再配置)を開催した。本科研のメンバーのうち川崎が共同コーディネーター(全4名)を務め、川崎と仁木が発表した。報告者は14名で、うち日本研究者が6名、欧米研究者が8名であった。日本と欧米の間で修験道史研究の成果を共有すると同時に、新たな研究の方向性について議論した。この成果を学術雑誌として出版すべく、主催校の関係者が準備を進めている。 また個別の成果では、『箕面寺縁起』について、仁木が、平安後期成立の幼学書『仲文章』により作文された本文のあること、作文のレベルが当代一級の学者や高僧には及ばないことを指摘した点が重要である。これに刺激を受けた他の研究者によって、平安・鎌倉期における『仲文章』受容の再検討も始まっている。これらの指摘は、同縁起の撰述に関する従来の推測、すなわち高度な知識をもつ高僧による作文という推測を覆す可能性があり、同縁起の成立事情について再検討が迫られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『箕面寺縁起』の基礎研究のまとめ、関連する役行者の伝記や図像の研究は、当初の予定よりもいくぶん遅れ気味であるが、本研究の成果を国際的・学際的な研究の場で公開し、議論を広める点については、当初の予定以上に進展している。既述の平成29年度の発表のほか、平成30年度も、国際研究集会「The World of Abhiseka: Consecration Rituals in the Buddhist Cultural Sphere(灌頂の世界)」(米国、カリフォルニア大学サンタバーバラ校)等、国内外の学会・研究集会で報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本研究課題の基礎研究については、平成30年度内に完成させる予定だが、その発表は幾分遅れる可能性がある。次に、研究成果の公開、特に海外の学術研究の場における公開については、当初の予定以上に進展しており、その点に重点を置き、推進する予定である。なお、研究代表者は、8月から約4か月間、在外研究を予定しているが、研究環境が整っているため、計画の大きな変更の必要はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
中世仏教関連図書の購入が不十分であった。翌年度、購入すべき図書を既にリストアップしているので、早期に購入し、研究に役立てたい。
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