研究課題/領域番号 |
16K02391
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研究機関 | 広島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
朝倉 和 広島商船高等専門学校, 一般教科, 教授 (00390493)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 翰林五鳳集 / 詩の総集 / 百人一首 / 花上集 |
研究実績の概要 |
今年度は研究初年度にあたるので、『翰林五鳳集』(以下、『五鳳集』と略す)の諸本収集による伝本研究、『五鳳集』に収録される各詩の作者や収集源の特定(鎌倉末期~室町初期の禅僧)に取りかかるとともに、『五山文学全集』『五山文学新集』『続群書類従』等に収録される作品集は限られるので、『五鳳集』収集詩に関連する、未刊行の別集や「詩の総集」を調査・確認したり(主な訪問先は、建仁寺両足院・国立公文書館内閣文庫・京都府立総合資料館)、それらの複写物を入手することに専心した。 『五鳳集』の伝本に関しては、①国会図書館蔵 相国寺雲興軒旧蔵本(旧帝国図書館本、「仏教全書」本の底本)、②国会図書館蔵 鶚軒文庫本、③国会図書館 端本(高木家旧蔵本)、④内閣文庫蔵 旧修史館本、⑤内閣文庫蔵 和学講談所本、⑥尊敬閣文庫本、⑦宮内庁書陵部本、⑧京都府立総合資料館本 を改めて確認し、さらに花園大学蔵 今津文庫本のコピーを入手できた。 また、東京大学史料編纂所蔵『諸書要目』11(仏教全書所収『翰林五鳳集作者索引』)を手がかりに、『五鳳集』収集詩の作者の整理を試みている。詩の収録数が多い禅僧としては、月舟寿桂、天隠龍沢、策彦周良、希世霊彦、琴叔景趣、瑞岩龍惺、江西龍派、仁如集堯、西胤俊承、虎関師錬等が挙げられる。一方、これは収集源が横川景三撰『百人一首』と特定できるが、1首しか収録されていない禅僧も数多く見受けられる。例えば、以遠澄期、観中中諦、希世霊彦、岐陽方秀、古剣妙快、寂室元光、大本良中、曇仲道芳、物先周格、無求周伸等である。なお、『百人一首』と同じく、五山文学における代表的な詩選集(アンソロジー)である『花上集』も収集源の一つであり、『五鳳集』の収集態度は、かなり特徴的であることが察せられる。 さらに、『花上集』に収録される絶海中津の七言絶句詩11首の注釈も試みた。いずれも『五鳳集』に採られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『五鳳集』の諸本収集・確認は順調である。『五鳳集』収集詩の作者や収集源の特定作業を進める際は、現在、唯一翻刻されている大日本仏教全書本(底本は相国寺雲興軒旧蔵本。部類本系統Ⅰ)だけでなく、鶚軒文庫本をはじめとする部類本系統Ⅱの伝本も併せて利用する必要がある。 また、『五鳳集』の収集源として、五山文学版『百人一首』や『花上集』など、五山詩のアンソロジーが指摘できる。このことは、『五鳳集』収集詩の作者200名弱のうち、約半数が判明したことになる。また、ある禅僧の作品がまとまって『五鳳集』に収録されるに際しての傾向に関しては、絶海中津(作品集は『蕉堅藁』)に注目して検証した。 なお、『五鳳集』収集詩に関連する、未刊行の別集や「詩の総集」が未だに見つかっていないことが、少なからず不安である。
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今後の研究の推進方策 |
五山文学版『百人一首』、『花上集』、絶海の『蕉堅藁』以外にも、『五鳳集』の収集源を特定して、その傾向を丁寧に検証する。『五鳳集』収集詩に関連する、未刊行の別集や「詩の総集」に関しては、研究協力者に情報やアドバイスを乞い、精力的に調査・発掘作業に勤しみたい。建仁寺両足院の調査は、年2回行ってきたが、もう少し増やしたい意向を持っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
寺院に伝本調査に赴く予定をしていたが、急遽、法事等が入り、実現できない場合があったため。
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次年度使用額の使用計画 |
寺院に伝本調査に赴く場合、調査期間を第3候補ぐらいまで余裕を持って想定し、スケジュール調整をして臨みたいと考える。特に来年度は、定期的に貴重書を閲覧・調査をさせていただいている建仁寺両足院の書庫の補修工事があると聞いているので、入念なスケジュール調整が必要とされる。
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