本研究は、『翰林五鳳集』(以下、『五鳳集』と略す)に収録される膨大な詩作について、その作者や収集源を追究することにより、現在では散逸している作品集や、伝未詳の禅僧の作品の存在を明らかにしながら、『五鳳集』に関する基礎的な事柄を整理することを目的としている。 今回、『五鳳集』所収の絶海中津の作品を調査する過程において巻第48に注目し、『五鳳集』の性質の一端を垣間見した。「仏教全書」本によると、巻第48には174首収録されている。詩の収録数が多い禅僧から掲げると、瑞渓周鳳(38)、万里集九(37)、驢雪鷹ハ(24)、策彦周良(12)、江西龍派(11)、西胤俊承(10)、仁如集堯(7)、絶海・天隠龍澤(6)、瑞岩龍惺(5)、横川景三(4)、柏岫周悦(3)、九鼎竺重・琴叔景趣(2)、仲芳円伊・南江宗ゲン・希世霊彦(村庵)・梅陽章杲・景徐周麟(宜竹)・彦龍周興・雪嶺永瑾(1)となる。翻って、『五鳳集』全巻を通じて、詩の収録数が多い禅僧としては、月舟寿桂、天隠龍沢、策彦周良、希世霊彦、琴叔景趣、瑞岩龍惺、江西龍派、仁如集堯、西胤俊承、虎関師錬等が挙げられるので、当該巻の分布には、偏りがあると言わざるを得ない。また、収集源として指摘できる作品集として、瑞渓『臥雲藁』(『新集』第5巻)、万里『梅花無尽蔵』(『新集』第6巻)、驢雪『驢雪藁』(『新集』別巻二)、江西『続翠詩藁』(『新集』別巻一)、西胤『真愚稿』(『全集』第3巻)、仁如『鏤氷集』(史料編纂所謄写本)、絶海『蕉堅藁』(『全集』第2巻)、天隠『黙雲藁』(『新集』第5巻)、横川『小補東遊集』『補庵京華後集』(『新集』第1巻)、南江『漁庵小藁』(『新集』第6巻)、希世『村庵藁』(『新集』第2巻)、景徐『翰林葫蘆集』(『全集』第4巻)、彦龍『半陶文集』(『新集』第4巻)が挙げられる。なお、『全集』は『五山文学全集』、『新集』は『五山文学新集』の略。
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