16・17世紀に多数制作された絵巻や奈良絵本には、経典の談義や仏教の唱導の影響が少なからず認められる。特に祖師や高僧の教えを説いた仮名法語は江戸初期に開版されたことからも、物語草子に多大なる影響を与えたと考えられる。しかしながら、お伽草子や仮名草子、仮名法語といったジャンルや時代による区分から、その影響関係については従来あまり注意を払われずにきたのが現状である。本研究は、具体的な作品の分析を通してその相関性について明示しただけでなく、江戸初期の絵入り版本との相関関係をも明らかにしたことで、ジャンルや時代区分にとらわれない物語草子の制作実態の一端を解明したものと考える。
|