| 研究課題/領域番号 |
16K02393
|
|---|
| 研究機関 | 武蔵野大学 |
|---|
研究代表者 |
寺島 恒世 武蔵野大学, 文学部, 教授 (80143080)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
| キーワード | 百人一首絵 / 三十六歌仙絵 / 時代不同歌合絵 / 書式 / 散らし書き / 百人一首 / 百人秀歌 |
|---|
| 研究実績の概要 |
継続して行ってきた歌仙絵作品の書式に関する研究においては、本年度は和歌の散らし書きの手法を解き明かす作業を進め、検討と考察を重ねた。具体的に、「三十六歌仙絵」・「百人一首絵」を通し、多様に書かれている実態を調査・整理し、書式の実相を把握するための分類方法につき、先行研究を踏まえながら、検討を行った。「三十六歌仙絵」については、これまで収集調査をしてきた画帖・扁額を含む諸例を、「百人一首絵」については、絵本・かるた類を含め、広く閲覧可能な諸例をそれぞれ広く披見し、検討を続けた。
なお、購入することができた新資料『絵本百人一首』及び『百人一首かるた』も調査対象に加え、書誌調査を行った上で、和歌、図像及び書式の調査と解析を行った。
その研究を進める一方で、「百人一首絵」に関わる考察をまとめ、国文学研究資料館の共同研究成果報告のシリーズとして企画されたブックレット「書物をひらく」の一冊として成果を公刊した。取り上げたのは、「百人一首に絵はあったか」の書名に示す通り、従来から議論がなされ、未だ結論が出ていない『百人一首』の絵の成立に関わる課題である。
近世以降多く描かれた「百人一首絵」は、中世以前の資料に乏しく、成立当初には存せず、後代に描かれたとする説も行われてきた。本書は、『百人一首』とともに『百人秀歌』の編者と認められる藤原定家の活動に即し、残された諸資料の再検討から、当初から存在したと見るのが自然であることを論じた。とりわけ『百人一首』と『百人秀歌』の関係を捉え直すことに重きを置き、成立の場である「嵯峨中院山荘」の構造、及び種々論じられてきた後鳥羽院との関係、とりわけ『最勝四天王院障子和歌』や『時代不同歌合』との相関を検証することを通して、解明を試みた。
また、都留文科大学国語国文学会春季講演会に招待され、「百人一首絵」に関する成果を発表した。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歌仙絵の書式についての課題は多様で、実態を詳細に辿る必要があり、その把握には時間と労力がかかるが、特徴的な主要な事例の精査を通し、多彩な実態を着実に整理した。
「百人一首絵」については、絵が成立当初から存在したか否かの難問につき、撰者の置かれた立場や歴史的状況を踏まえ、可能な限りの論拠に基づく形で見通しを提示することができた。以上により、おおむね順調な進捗状況にあると判断する。
|
| 今後の研究の推進方策 |
課題としてきた書式の多様な展開を解明するため、その整理・分類における基準の立て方を徹して検討することが求められる。研究史を詳細に把握する作業を継続するとともに、検討してきた論書の分析をさらに進め、先行研究の成果を評価・分類した上で、厖大な実態の検討を深化させる。それらに基づき、説得的な考察を加えた上で、有るべき分類案を提示する。
その作業を踏まえ、研究目的とする歌仙絵の総合的把握のため、書の解明を踏まえた絵画と和歌との相関につき、絵画・和歌・書それぞれの異なる角度から進めてきた検討を総合化する。
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
計画していた調査のための出張と学会参加のための出張が、天候不良（大型台風接近）による交通機関の運休、および身内の不幸によるキャンセルにより、いずれも不可能となったため。
|
