宮内省図書頭並びに帝室博物館総長として国家的重責を担った森鴎外晩年の活動のうち、第三代博物館総長として行った歴史的改革の学術的基盤を解明した。博物館における鴎外の主要改革は①今日スタンダードなものとなっている時代別展示の導入、②学術報告書、目録類など出版物の創刊・増加、③正倉院宝物観覧の一般研究者への開放の三点にまとめることができる。これらはこれまで国内事情との関連において話題とされてきたが、本研究は同時代ドイツにおける世界的先進事例と具体的に関連性を持っていたことを明らかにしたうえで、その改革が当時の日本の強みを最大限に発揮するものであったことについて言及した。
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